研究課題
基盤研究(C)
ブタレンサ球菌(Streptococcus suis)はブタの常在菌で、ブタのみならずブタ或いはブタ肉と接触したヒトにも、髄膜炎・敗血症毒素ショック症候群等の全身症状を引き起こし、高い致死率をもたらす。本研究ではこのS. suisの病原性に関わるシグナル伝達機構の解析を行ない、以下の点を明らかにした。1.S. suis P1/7株のゲノム配列より、9種類の2成分制御系の存在が予測された。これらの組換え蛋白質を発現する大腸菌株を作成し、精製した組換え蛋白質を用いて、これらが実際に2成分制御系のシグナル伝達を起すことを、生化学的解析により明らかにした。2成分制御系間のクロストークは認められなかった。2.4種類の2成分制御系を完全欠損した、S. suis P1/7変異株を構築した。3.S. suis P1/7株をマウスに腹腔注射すると、容易に感染が成立するが、ある特定の条件下では髄膜炎を発症したと思われるマウスを観察することが出来た。また感染マウスは、この9種類の2成分制御系に対する抗体を保持していたので、これらの2成分制御系はin vivoでも発現していることが明らかとなった。4.2成分制御系を欠損した3種類の変異株で、親株と比較してマウスビルレンスが低下していた。5.S. suisで報告されているビルレンス因子の幾つかが、これら2成分制御系によって発現を制御されていることを、2成分制御系を欠損した変異株と親株をin vitroで培養したときの、ビルレンス因子のmRNA発現量を比較することにより証明した。