研究課題
基盤研究(C)
薬剤に耐性を獲得したHIV(耐性HIV)の出現が適切な治療の障害となっている.そのため,HIV薬剤耐性検査や指向性検査により適切な治療薬を選択することが重要であるが,本検査は施設により性能が異なることが問題である.そこで, 外部精度管理による施設間差の是正と性能評価が求められているが,標準物質として複数のHIVが混在している可能性のある患者血漿が用いられているため,正しい評価は困難である.本研究では合成RNAを用いて,配列情報が明確な新たな標準物質の開発を目指した.HCV 5’UTRの一部遺伝子配列を組み込んだ転写用ベクターpGEM-HCVを作製した.国内外で薬剤耐性検査に使用されているプライマー設定位置をもとに,それら全プライマーと解析配列1017bpを含むHIV gag-pol領域を増幅するプライマーを設計した.このプライマーを用いて耐性HIVと野生型HIV RNAから約4 kbpのフラグメントを増幅し,pGEM-HCVに組み込んだ.T7 RNAポリメラーゼによりHIV gag-pol-HCV 5’UTR RNAを転写精製後,凍結乾燥し標準物質とした.標準物質のRNA量はCobas TaqMan HCVによる3重測定により決定した.塩基配列は国内で実施されているHIV薬剤耐性検査3方法を用いて,同一の塩基配列であることを確認した.また,耐性HIVと野生型HIV由来の標準物質をRNA量から特定の比率に混合した標準物質を作製した.この混合標準物質を用いて3方法の性能比較をした結果,方法により検出可能な比率が異なることが確認された.今回の研究では1)標準物質作製のベースとなるベクターを作製し,2)標準物質の作製方法を確立し,3)方法による検出感度の違いを明らかにした.
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