研究課題
基盤研究(C)
新規HIV-2流行株CRF01_AB感染例において、ウイルスの薬剤感受性試験の実施により有効薬剤と判定できたアバカビル、ラミブジン、ロピナビル/リトナビルを用いて抗HIV治療を開始し、血中ウイルス量を検出限度以下に抑制・維持することに成功した。しかし、治療開始後18.7ヶ月目に血中ウイルス量の再上昇を認め、ウイルス遺伝子の解析により、薬剤標的分子であるプロテアーゼ内にR70K変異、また、逆転写酵素内に4つのアミノ酸変異(M184V、D192N、R200K、D345N)の誘導を認めた。これまでHIV-2CRF01-AB株の薬剤耐性獲得機構は未解明であったため、これらの変異が実際に薬剤耐性に関連しているのかどうかを明らかにすることを本年度の目的とした。検出した5つのアミノ酸変異をそれぞれHIV-2 CRFO1_AB株の感染性分子クローンに導入し、発現させた変異ウイルスの薬剤感受性を調べた。その結果、プロテアーゼ内のR70K変異はロピナビルを含むプロテーゼ阻害剤への耐性には寄与していないこと、その一方で、逆転写酵素内のM184V変異がラミブジンへの高度耐性化(>5031.4倍)、エムトリシタビンへの高度交差耐性化(>6153.8倍)、さらに、アバカビルへの中度耐性化(6.2倍)の責任変異であることを突き止めた。興味深いことに、逆転写酵素内の他の3つの変異(D192N、R200K、D345N)は、薬剤感受性の低下には関与していなかったが、M184V変異の獲得により低下したウイルス複製能を回復させる役割を果たしていることがウイルス増殖速度解析により明らかとなった。今後、更なるin vitro実験を実施し、種々の抗HIV薬存在下でHIV-2 CRF01_AB株の薬剤耐性獲得機構を解明することにより、HIV-2感染症治療の成績向上に貢献し得る知見が得られるものと期待される。
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AIDS Research and Human Retroviruses
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