研究概要 |
本研究は,あらゆる分野におけるテクストの電子化が一挙に進みつつある中で,俯瞰的な抽象化と精密な深読みとを,爆発的な規模のテクストに適用する研究が可能となり,文学研究に全く新しい局面をもたらすことを目的とするものである. 平成24年度は,文学研究室ツールをオントロジー対応することを目指した.そのために,以下の2つの方法を実行した. まず第一に,テクスト自動解析ツールへオントロジー対応モジュールを実装することがあげられる.具体的には,同義語辞書,類義語辞書の拡張として,句,節,文,意味要素,解釈要素,概念,要点,意図,修辞特徴それぞれの水準における構成要素の辞書とタグ付け機構を実装した. そして第二に,模範事例オントロジーを作成した.すでに実装済みのテクスト自動解析ツールをもとに,複数のオントロジーを多層オントロジーとして参照しながらテクストの自動解析を行うモジュールを設計・実装した.また,日本現代文学と文芸批評の分野を取り上げ,模範的なオントロジーを構築する作業も同時に進めた. これらは,大量の文学テクストを俯瞰的でありながら緻密に「機械が読む」ことを可能とするソフトウェア・ツールを開発する目的のための基礎をなすものである.また最終的には,どのような文学研究室でも利用できるようなユーザ・インタフェイスを用意することで文学研究を科学的に行う可能性の実現を目指しているため,本年度は具体的な方法論を用いた研究を行いつつも,研究の根幹をつくり上げることに集中した.
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度は,複雑ネットワーク解析への拡張,分野オントロジーの精緻化を実施する.具体的な手順としては,以下の2つがあげられる. 1)当該分野のテクストを網羅的に収集し,分野の価値観を良く表す知識単位をメタデータや前後のコンテクスト情報も含めて抽出する. 2)抽出された断片的な価値観に関わる表象を,相互の共起・依存関係から統合する.
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