研究課題/領域番号 |
24659195
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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配分区分 | 基金 |
研究分野 |
細菌学(含真菌学)
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
清水 徹 金沢大学, 医学系, 教授 (80235655)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2012年度)
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配分額 *注記 |
3,770千円 (直接経費: 2,900千円、間接経費: 870千円)
2013年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2012年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
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キーワード | ウェルシュ菌 / 染色体複製 / ガス壊疽 / 増殖速度 / 細菌 |
研究概要 |
24年度はDNAマイクロアレイを用いた複製中の染色体DNAの定量を行なった。ウェルシュ菌strain 13をGAM培地中にて37°Cで培養を行い、増殖の活発な対数増殖期の染色体DNAを調製し、さらにコントロールとして静止期のDNAを調製した。両DNAを鋳型としCy5 、Cy3でラベルしたcDNAを合成し、ウェルシュ菌DNAマイクロアレイにハイブリダイズさせ、本菌の全遺伝子領域ごとの両増殖時期のDNA量を定量し静止期を分母とした対数増殖期のDNA量を計算した。その結果、対数増殖期の複製開始点 (ori) のDNA量は複製終止点 (ter) よりも2倍程度多く、基本的なori-ter型の複製が進んでいることが示されたが、oriからterに至る途中の領域にもDNA量が多い部分、つまり部分的にDNA複製が起きている可能性のある領域が複数確認された。 これらの染色体複製部位を詳細に解析するため、対数増殖期~静止期における時間ごとの変化を解析した。これらの複製部位におけるDNA量は初期では複数の複製開始ピークが見られたが、時間とともにその数と大きさが減少し通常の複製パターンを示していくことが判明した。培養温度を30°C に変化させ増殖速度を抑制すると、通常のori-ter型の複製パターンしか見られなかったことから、複数の複製開始ピークは増殖速度が速い時に現れる現象であることが推察された。 さらに独立した実験として、ウェルシュ菌DNA断片をクロラムフェニコール耐性遺伝子に結合させて遺伝子ライブラリーを作成し、ウェルシュ菌に形質転換したところ、本来はDNAを複製できずに耐性菌の生育が見られないはずのところ、多数の菌が生育した。このことはこれらの菌内にあるDNAにDNA複製開始部位が含まれることを示唆しており、ウェルシュ菌DNAには自己複製部位が多数存在することが強く考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の計画では、24年度にはマイクロアレイ実験を主として進め、ウェルシュ菌の染色体上に存在する複数の複製開始部位を詳細に解析するものであったが、研究を進めるにあたり非常に順調に結果が得られ、ウェルシュ菌染色体には複数の複製開始部位が存在することの確証が得られ、さらにこの複製部位が増殖速度の速い時期にしか見られないこと、30度程度の増殖速度の遅い条件では現れないこと、などのデータが再現性よく得られてきた。 さらに当初計画に加えて、ランダムライブラリーを用いた実験により、ARS(自発的複製関連配列)のクローニングにも成功し、ウェルシュ菌染色体にはoriC以外にも自発的に複製を開始できる部位が複数存在する可能性を機能的な方面からも確認できたことにより、当初計画以上に研究が進展していると思われる。
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今後の研究の推進方策 |
1. 自律的複製領域(ARS)の同定:24年度に同定された染色体領域が本当に複製領域として機能するかを確認するため、ARSの同定および複製能の解析を試みる。すでにウェルシュ菌strain 13の染色体ライブラリーによる複製活性のスクリーニングを開始しているが、結果としてウェルシュ菌内でプラスミドとして複製され、Cm耐性を発現しCmプレートにコロニーを作るクローンが多数得られている。今後もARSが含まれるDNA断片を可能な限り集めるとともに、各断片の塩基配列を決定してゲノム情報と参照することにより、染色体のどの位置にARSが存在するのかを決定する。 2. ARSの機能解析:染色体ライブラリーから200個程度の独立したクローンを得て、ARSの染色体上の位置が明らかになれば、先のマイクロアレイ実験で得られた複製ピークの位置情報と照合し、ウェルシュ菌染色体に存在するARSの位置と数を推定する。得られたARSから数種類を任意に選択し、それらの塩基配列を基にPCRにて様々なARSのdeletionを作製し、各deletion断片をウェルシュ菌に形質転換して複製に必要な最低限のDNA領域を同定し、ARSとして機能するDNA配列や領域を特定しウェルシュ菌のDNA複製に関与するori以外のARSの機能を明らかにしていく。 3. ARSの構造解析:以上により得られた最小単位のARS塩基配列や本来のori配列などを相互に比較解析し、すべてに共通する塩基配列上の特徴や二次構造上の類似性を明らかにし、全ゲノム上でその配列に類似する部分をさらに検索してそのDNAをPCRで増幅しARS活性を調べる。これにより情報解析から推測されたARSの共通構造がウェルシュ菌のDNA複製機構に普遍であることが証明され、本菌のDNA複製が他の細菌とまったく異なる機構により行なわれていることが証明できると思われる。
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次年度の研究費の使用計画 |
24年度の研究費の使用はほぼ計画通りに行なわれ、むしろ研究計画以上の成果を達成したと思われる。未使用分の研究費は180円とごくわずかであり、この研究費は25年度のピペットチップ分に使用する予定であり、25年度の研究計画には変更なく、目的達成のために予定通り使用していく。
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