研究課題
若手研究(B)
ラジオ波焼灼の不確実性を解消するため肝臓の熱輸送モデル構築を目的とし,術中に熱伝導量および熱伝達量をセンシングし,センシングした熱量を基に高精度に患部の温度分布を算出する肝臓の熱輸送モデルの構築を行った.従来,肝臓に対するラジオ波焼灼療法では,腫瘍を焼灼する際に患部で生じる2つの現象,(1)組織の温度上昇に伴う熱伝導率の変化(有効熱伝導率の温度依存性),(2)術中の組織血流量の変化に伴う熱伝達率の変化(熱伝達率の組織血流量依存性),が手技を複雑化しており,この複雑性が,本来焼灼すべき腫瘍が十分に加温されず未焼灼領域が残留するという問題を引き起こしていた.また,有効熱伝導量と熱伝達量に常に一定値を用いていた従来のシミュレーションでは,臨床利用に耐えうる高精度な温度解析は期待できなかった.以上の課題に対し,術中に有効熱伝導量および熱伝達量をセンシングし高精度に温度分布を算出する手法を構築し,in vitro,in vivoにおける検証を通じて,有効熱伝導量センシング手法および熱伝達量センシング手法を用いることにより温度解析精度が向上することを確認した.具体的には,(1) 肝臓の有効熱伝導率の温度依存性の解明とモデル化,(2)肝臓のみかけの熱伝導率の組織血流量依存性の解明とモデル化,に取組み,両者の知見から,術中に有効熱伝導量と熱伝達量をセンシングする手法を構築した.また,センシングした熱物性値を基に術中の肝臓の温度分布を算出するラジオ波焼灼療法用温度分布シミュレータの開発に取り組み,in vitro,in vivo環境下において,シミュレータの精度評価を行った.本研究にて構築した有効熱伝導量センシング手法,熱伝達量センシング手法は従来,低侵襲な治療法として有望視されながらその根治性が疑問視されてきたラジオ波焼灼療法の今後の発展を促す技術として医学的な貢献が期待されるものである.
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