伝統的木造建築物の部材に残された加工痕から、使用された工具の刃先線形状を推定する手法を確立することを試みた。専門技術者が4種類の形状の異なるチョウナで加工した木材表面に残る加工痕を三次元形状計測し、工具の進行方向と平行方向の凹凸の断面形状をもとに刃先線形状を推定した。得られた刃先線形状は写真から抽出した各工具の刃先線形状と概ね一致した。また、実際の建物部材の刃痕についても同様の計測を試み、実験的に作成した加工痕と同様の特徴があることを確認した。建物に使用されている部材の加工痕は、加工に由来する凹凸と虫害や風食などの経年劣化による凹凸が重畳しているため、両者を分離するのが今後の課題である。
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