18~20世紀における英小説の歩行表象について研究を行った。18世紀では、上流階級を描いた小説が多く、歩行表象も制度化された庭園散歩や舞踏会のダンスなど身体的機能が習慣や因習によってかなり制限されている。19世紀では、中・下層階級の人物を扱う小説が多く見られ、階級間・男女間での歩行表象の違いや、都市部と田舎での捉え方の違いなど多岐にわたる。ディケンズに代表される都市部では、小説の構成に関わる歩行表象が行われている。ツアーコンダクターのように物語を導く役割をも担っていることが特徴的である。20世紀になると、身体的機能よりも心理的・想像的身体機能の表象が描かれ、空間的制限を超えた描写が目立つ。
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