研究課題
若手研究(B)
フラーレンは内包金属からの電子移動によって内側から電子状態を操作することや、化学修飾によって外側から機能化することが可能な非常に興味深い分子である。中でもLu3N@C80は、Lu3Nから6電子を受け取ったC80の内部場が均一になるため、Lu3Nが自由に回転している。この回転運動を望み通りに制御できれば、機能性ナノ分子への応用が期待できる。そこで、本研究ではLu3N@C80に化学修飾を行うことでLu3Nの動的挙動を制御する方法を解明することを目的とする。化学修飾には高い電子供与性によってフラーレンの内部場に変化を与えることが期待できるケイ素化合物を選択した。1.モノシリル化Lu3N@C80のシリレン付加体は、X線構造解析により[5,6]-open構造であることがわかっている。そこで、この分子内のLu3Nの回転障壁を調べたところ、ケイ素原子―Lu原子―窒素原子を結ぶ直線を軸とした回転の障壁が約14 kcal/molと最も低く、モノシリル化がLu3Nの自由回転を一方向に制御できることを明らかにした。2.ビスシリル化Lu3N@C80のジシリラン付加体は、シリレン付加体とは対照的に、2つのケイ素原子の下に2つのLu原子が位置する構造がエネルギー的に非常に安定となり、回転が制限されることがわかった。ジシリラン付加体におけるケイ素原子からフラーレンへの電子移動量は、シリレン付加体のそれよりも大きく、フラーレンの内部場に与える影響の違いがLu3Nの動的挙動の違いにあらわれたと推測される。また、シリレン付加体およびジシリラン付加体のLUMO準位は、Lu3N@C80のそれよりも上昇しており、シリル化がエネルギー準位を効果的に変化させることを見出した。以上より、金属内包フラーレンのモノシリル化とビスリシル化は、内包金属の動的挙動を制御するのに非常に有用な方法であることを明らかにした。
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http://www.tara.tsukuba.ac.jp/~akasaka-lab/