研究課題
若手研究(B)
哺乳子牛の生体防御機構の強化により、下痢や肺炎等による消耗を未然に防ぎ、健全な発育を目指すため、本年度はアスタキサンチン(AX)給与による哺乳子牛の抗炎症反応、加えてax体内動態を検討した。出生後1~5週ホルスタイン種雌雄にAX(Haematococcus pluvialis由来)を0.5g/kg/BW給与するAX給与区(n=8)および無給与区(n=8)を設置し、両区3~5週齢時に50ng/kg/BWのlipopolysaccharide(LPS)を静脈投与することにより誘発された急性炎症反応によって、抗炎症反応を比較した。LPS投与後の急性炎症反応時の白血球数は両区とも1時間後に減少し、その後AX給与区では2~3時間で回復傾向を示すが、無給与区では回復が12時間後にまで遅延した。またコルチゾル、炎症性サイトカインおよび急性期タンパク質の末梢血中濃度は、無給与区と比較してAX給与区では急激な増加が抑えられていた。以上の結果から、哺乳子牛へのAX給与は過剰な急性炎症反応を低減する可能性が示唆された。また、哺乳子牛におけるAX体内動態を明らかにするため、AX給与後、各臓器中のAX濃度をLC/MS/MS法を用いて検討した。その結果、無給与の子牛では検出されなかったのに対し、AX給与区では投与後6時間をピークにAXが検出された。加えて、肝臓等の数種の臓器中からAXが検出された。AXは実験動物において生体防御機構の低下を大幅に抑制することが実証されており、ウシでもその効果は期待されているが、ほとんど知見が得られていない。本研究課題によって哺乳子牛におけるAXの抗炎症作用が示唆されたことにより、哺乳子牛の生体防御機構の強化を目的とした生理活性物質としてのAXの実用化の可能性が期待される。