研究課題
若手研究(B)
【はじめに】仔馬の胃潰瘍は、臨床症状が現れにくく、しばしば無症状のまま破局的な状態を迎えることから、診断の困難な生産疾患として問題視されている。本研究ではメタボロミクス解析技術を用い、仔馬胃潰瘍を早期に診断できる技術を開発することを最終的なゴールとして、まず胃潰瘍を発症した仔馬に特異的な新規バイオマーカーの検索を行った。【材料と方法】日高地区の当歳馬56頭(雄28頭、雌28頭)を実験に供与した。内視鏡によりこれらの動物の胃潰瘍検査を行い、炎症像を胃に認める個体を胃潰瘍群、また症状の認められないものを正常群として2群に分けた。なお実験に供与した動物は、いずれも採血以前に薬剤投与による治療等行っていない個体とした。先行した予備実験では、低分子化合物にバイオマーカー候補分子が見いだされたことから、分子量100から1000までの化合物にターゲットを絞り、除蛋白した血清成分を逆相高速液体クロマトグラフィ(RP-HPLC)で分離した後、飛行時間型質量分析装置(tof/MS)にて分析し、二群間で比較した。【結果】分析の結果3376ピークが検出された。これらのピークについて直交最小二乗法判別分析(OPLS-DA)による多変量解析を行ったところ、二群間に顕著な差が認められ且つ有意差のあるバイオマーカー候補分子は認められなかった。【考察と今後の方針】以上の結果から、HPLC-tof/MSによって見いだされる、胃潰瘍のバイオマーカー候補となり得る低分子化合物は、除蛋白後の血清中に存在しないか、もしくは検出限界以下である可能性が考えられた。このため、検出方法の再検討、もしくはターゲットの拡大が必要と思われる。予備試験で対象とした動物は治療中の個体が主であり、予備試験では、治療薬もしくはその代謝物が候補分子に取り上げられた可能性が高い。