研究課題
若手研究(B)
腸上皮組織の構築と維持の過程においては、WntシグナルとNotchシグナルが必須の働きを担っており、これらの制御が破綻すると様々な腸疾患が引き起こされる。しかしながら、腸上皮におけるWnt・Notchシグナルの制御機構の詳細や、Wnt・Notch両シグナル間のクロストーク機構は未だ不明な点が多い。本研究では、Wnt・Notch両シグナルを制御する能力を持つシグナル制御分子NLKに注目し、「腸上皮組織の構築・維持におけるWnt・Notch両シグナルの統合制御機構とその重要性」についての解析を行っている。本年度はまず、ゼブラフィッシュをモデルに解析を行った。最初に、ゼブラフィッシュNLKホモログNlk2が形成途上の腸に発現していることを確認した。次に、Morpholino Antisense Oligoを用いてNlk2の機能を阻害したところ、腸の原基の形成には変化が無かったが、形成途上の腸におけるNotchシグナルの亢進とWntシグナルの低下が起きた。このことは、Nlk2が形成途上の腸においてWntシグナルを正に、Notchシグナルを負に制御する可能性を示唆している。また、ヒト大腸上皮細胞株においてNLKを過剰発現するとWntシグナルの促進とNotchシグナルの低下が起きることも確認しており、このことから、腸におけるNLKのWnt/Notchシグナル制御は種をこえて保存された現象であると考えられる。現在、NLKによるWnt/Notchシグナル制御をより詳細に解析するために、Nlk2遺伝子破壊動物及び、Nlk2機能時期部位特異的改変動物の作成を進めている。また一方で、ヒト大腸がんとNLKの関係の解析も行い、多くの大腸がんにおいてNLKの発現が亢進していることを発見した。このことから、NLKは腸上皮組織の維持において重要な役割を果たしていると予測している。
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Developmental Biology
巻: 370. 号: 1 ページ: 71-85
10.1016/j.cellsig.2012.09.017
http://www.bioreg.kyushu-u.ac.jp/labo/crs/sub11.html