研究課題
若手研究(B)
本研究は食道癌患者の血清中に出現する腫瘍微小環境関連候補分子として我々が新規に同定したα1-アンチトリプシン(A1AT)断片とトランスサイレチン(TTR)断片を高速プロテオーム解析法で同定・定量することで病態を把握し、リンパ行性転移の成立に関する分子生物学的特性の研究と関連させ、リンパ行性転移のメカニズム、リンパ節微小転移の臨床的意義、癌の悪性度、腫瘍微小環境などを解明し、これらの基礎研究の結果を臨床に還元することを目的とする。食道癌患者と健常者を対象に血清中A1ATペプチド断片を定量し、臨床病理学的因子との関連を検討した結果、食道癌患者の38.5%で血清中A1ATペプチド断片陽性であった。また、リンパ節転移陽性症例での陽性率は80%であり、血清A1ATペプチド断片陽性はリンパ節転移陽性のマーカーとなりうる可能性が示唆された。今後、予後解析を行う。食道癌原発巣におけるケモカイン・ケモカインレセプター(CXCL12、CXCR4)、脈管新生因子と脈管新生の程度を免疫染色(VEGF、CD105、D2-40)と微小脈管密度を用いて評価した結果、CXCL12、CXCR4の発現と脈管新生の程度との関連が示唆された。今後は手術で得られたリンパ節材料においても原発巣と同様の検討を行う。また、通常行われるH.E.染色に加え、サイトケラチンによる免疫組織学的方法とCEA-mRNAをprimerとしたRT-PCRにより、リンパ節微小転移を同定・検出し、臨床的意義を明らかにする。さらに、A1ATとTTRのペプチド断片がプロテアーゼの作用により親蛋白から切断されたものなのか、あるいは、腫瘍組織でのde novo産生によるものなのかを細胞株・動物実験により明らかにする。
すべて 2012
すべて 学会発表 (1件)