研究概要 |
我々は軸索再生阻害因子であるケラタン硫酸(KSPG)に注目し、炎症性脱髄性ポリニューロパチーの代表であるギラン・バレー症候群の動物モデルであるexperimental autoimmune neuritis(EAN)において、何らかの関連があるか、またKSPGが治療のターゲットとなるかを検討した。EANラットの運動機能は感作後9日目より麻痺を発症し、14-18日目でピークを迎え、25日目で麻痺は改善した。controlとEANの脊髄でのKSPG の発現をwestern blotで解析したところcontrolとEAN発症前に認めたが、EAN発症後消失し、感作後90日で発現回復を認めた。坐骨神経はcontrol、EAN共に発現を認めず、脊髄ではどのレベルにおいてもEANで発現が消失した。 組織学的検討では5D4(KSPG), Iba1(microglia), CD68(M1 microglia), CD206(M2microglia)の各抗体を使用し脊髄の免疫染色を行いcontrolでは前角に5D4の発現をIba1とともに認め、EAN発症後では5D4の消失とともにIba1は後角に強く発現していた。 また、EANはM1、M2ともに増加、5D4は消失し、controlで5D4はM2とmergeしていた。脊髄よりミクログリアを単離しFACSを用いて解析したところEANではミクログリア数の増加とミクログリア上のKSの消失が同様に確認された。サイトカインの変動を解析したところEANではIFN-γ, IL1-β, TNF-αの炎症性サイトカインが上昇しIL-4, IL-10の抗炎症性サイトカインは減少していた。 以上の検討よりKSPGはミクログリア上に存在し、EAN発症でミクログリアがKSを失うと活性化し、M1型の形質を獲得することにより炎症性サイトカインを発し、悪化させることが考えられた。
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