研究課題
若手研究(B)
本研究の目的は以下の二つである。①薬の血中濃度を一定に保つことのできる最新の徐放化技術を応用し、麻酔薬が中枢神経に及ぼす形態学的影響に加え、機能への影響について検討する。②麻酔薬の主なターゲットであるGABA受容体に関連して、細胞内塩素イオン濃度が変化した遺伝子改変動物で薬の作用がどのように変化するのかを明らかにする。本研究により、乳幼児に対して安全に利用できる麻酔薬に関する重要な知見が得られることを期待して実験を行った。麻酔薬の皮下投与あるいは腹腔内投与による研究は多いが、薬の血中濃度を一定に保つことは難しく、低酸素による影響と薬そのものの作用を分離することが難しかった。薬剤の徐放化技術を用いて適切な濃度を設定できれば、この問題点をクリアできると考えた。また、研究の対象が幼若な動物であるので、薬の投与が頻回になるとそれによる侵襲も無視できなくなる。そこで、本研究ではin vivoで薬の血中濃度を長期間一定に保つための工夫として、徐放することが出来る麻酔薬の製剤を新たに開発することとした。麻酔薬としてプロポフォールを選択し、薬剤をパックする生体内分解材料としてポリ乳酸とグリコール酸を使用して徐放製剤の作成に取り組んだ。薬剤を動物に注射するためには徐放薬を粒子状にしなければならず、現段階では粒子状の製剤で安定的に生体内で薬の血中濃度を維持できるものを得るまでには至ることができなかった。