研究課題
若手研究(B)
マウス早産モデルの確立ヒトの早産においては、炎症反応誘導からなる機序が重要であり、これを模して、マウスの早産モデルとしても妊娠マウスにLPSを腹腔内投与することで炎症反応を惹起し、早産を誘発するモデルがこれまでに確立されていた。最近LPSの膣内投与によるモデルが報告されたが(Gonzalez JM et al. Am J Pathol. 179(2):838-49, 2011)、膣から子宮への上行感染により早産が誘発される機序は最もヒトにおける早産の発症を模しており、母マウスの全身性の反応も過去のモデルに比較して少ないと考えられた。よって、この早産モデルを確立するべく、野生型の妊娠マウスを用いて、手技の確率およびLPSの投与量の検討を行い、安定した実験系を確立することができた。本モデルにより、90%以上において早産を誘発することができ、LPSの全身投与で危惧される全身の炎症反応は起こらず、母マウスの死亡もほとんど観察されないことが分かった。早産発症へのApoptosis signal-regulating kinase1(ASK1)の関与の検討Apoptosis signal-regulating kinase1(ASK1)は、ストレス応答性MAPKであるJNKおよびp38の上流に位置するMAPKKKであり、多様なストレスにより誘導されるアポトーシスや、炎症性サイトカインの産生を中心とする自然免疫応答においてJNKおよびp38経路の制御を介して重要な役割を果たす分子である。そこで、まず上記の早産モデルを施行した野生型の妊娠マウスの子宮からタンパクを抽出し、ウェスタンブロット解析により、とくにp38経路が活性化されていることを見出した。子宮におけるASK1の活性化を明らかにするにはまだ実験条件の検討の余地がある状況ではあった。6か月の期間のみではノックアウトマウスを用いて検討する段階には至らなかったが、将来的にはASK1ノックアウトマウスを用いてASK1の関与を検討していきたいと考えている。今回は海外留学により研究が中断してしまうことになったが、帰国後に現在までに得られた知見を基にして再度、このテーマでの研究を展開していきたいと考えている。