研究概要 |
はじめに、申請者らが解析対象としてきたマウス骨延長モデルを用いて、間葉系幹細胞の局在解析に取り組んだ。具体的な手法として、間葉系幹細胞を同定するための特異的抗原(Sca-1, CD44, CD45, CD31, PDGFレセプターα,Nestinなど)を数種類組み合わせた免疫染色を経時的に行った。延長終了時の骨延長部のサンプルでは間葉系幹細胞が延長部に集積している像を得た。また、延長部の組織を取り出し、コラゲナーゼ、ディスパーゼで処理した後に間葉系幹細胞培地を用いて培養を試みた。培養された細胞は一般的な間葉系幹細胞の性質である多分化能(骨、軟骨、脂肪組織への分化能)を有していた。また、形態学的にも繊維芽細胞様の細胞であった。以上のことから、マウス骨延長治癒過程に置いて内在性の間葉系幹細胞は延長部に集積し、骨、軟骨再生に寄与していることが示唆された。細胞移植治療はこれまで治癒が困難であった大型組織欠損の再生を実現しうる可能性を持っている。しかし、細胞移植治療には多くの問題点も残されているのも事実である。細胞培養のための時間と経費、細胞品質の安定性の問題、移植後の腫瘍化、細胞採取に伴う侵襲などが挙げられる。これらの問題は、細胞を体内から取り出し、培養するため起こる問題である。そのため、もし内在性幹細胞の移動をコントロールすることができれば、再生医療は新しいステージへと進むことができる。今後の解析では、同モデルを用いて間葉系幹細胞の集積因子の解析を行う。
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