1948年に英国から独立するまで、スリランカ紅茶業は大規模プランテーション経営が一般的であった。独立以降、紅茶産業における人間開発問題といえば、紅茶プランテーションにおける下位民族インド・タミル人や低位カーストである紅茶業労働という民族・カースト問題に焦点があてられてきていた。しかし、小農経営化が推進され、増加する傾向の中で、多数民族であるシンハラ人も紅茶セクターにおける労働に従事するようになっており、スリランカの紅茶業セクター内の生活環境や労働環境は経営形態による相違点が生じてきている。本研究では、経営形態を大きくプランテーションと小農経営の2つにわけ、経営形態の違う紅茶業労働において、労働者の労働・生活環境などを調査するとともに、実態のつかみにくい家族従事者であるこどもの置かれている状況において調査を行った。 調査の結果、プランテーション経営にも大きく分け3つの形態があり、小規模経営においても2つの形態があることがわかった。プランテーションに居住する労働者の労働環境は改善されつつあるものの、生活環境については各プランテーション内でさえ労働者間においても格差が見られた。いっぽう、スリランカ統計局のこどもの活動データによると、農園内における家族内労働や経済活動に従事しているこどもたちの割合が、都市や農村も多い。その理由として世帯収入を増やすためと述べているこどもたちの割合が多かった。農園関係者や労働者へのインタビューでは、こどもたちが労働者として働くことはなく、みな学校に行っているいという回答であったが、平日の午前中に労働者宅へ訪問したところ多くのこどもたちが自宅におり、学校に行っていないこどもも多くいることが確認できた。一方、小農経営農家では大規模農園と同じ形態の場合には、プランテーション居住者と同じ状況であった。しかし、こどもたちの置かれている状況においては、様々であり今後さらなる調査が必要である。
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