本研究の目的は、文学教材の「読解力」とメディアの表現の1分析力」との相乗的育成および生徒の自己評価力育成について、下記の仮説を検証し、この学習指導方法の意義を明らかにすることである。 仮説1:文学教材の象徴的・比喩的・暗示的表現の「読解力」の習得に、メディアの表現での象徴的・比喩的・暗示的な表現の分析および分析力のスキル化を組み合わせると、「読解力」の習得も「分析力」のスキルとしての定着もすすむというように相乗的育成が生じる。 仮説2:仮説1は、授業者が、国語の教材を用いた学習とメディアの表現を教材に用いた学習とをくつなげる観点〉を示した場合に、学習集団に遍在的に成立する。 仮説3:生徒にメタ認知的に自己の学習活動を捉えさせると、読解・評価のメカニズムを理解したり、自己の学習到達度を検証したり、他の場面への活用ができるようになる。すなわち、ここまでの学習活動で、PISA型読解力の「情報の取出し、解釈・熟考、評価、学習課題の発見、討論による課題解決」が育成できると同時に、「どのような枠組みで学習をおこなっているのか」といったメタ認知によって、PISA型読解力の枠組みを相対化しつつ自己のスキルや態度、能力を把握できる評価力を育成できる。 2011年度までに仮説1は実証できた。2012年度は、以下の3つの方法で比較検証し仮説2と3を実証した。 A群 「千と千尋の神隠し分析」と「新旧ドラえもん比較」、「CM制作」をおこなった後に、文学的文章の学習をおこなう。文学的文章の学習には、「CM分析」の学習を組み込む。 メディアの表現と文学教材の学習とがどうつながるのかを授業者が適宜説明して、文学教材の読解とCMの分析をおこなわせる。 B群 「千と千尋の神隠し分析」と「CM分析」、「CM制作」をおこなった後に、文学的文章の学習をおこなう。文学的文章の学習には、「新旧ドラえもん比較」の学習を組み込む。 メディアの表現の学習と文学教材の学習とのつながりを生徒に気づかせるように授業者が支援して、文学教材の読解をおこなわせる。 C群 「千と千尋の神隠し分析」と「CM分析」、「CM制作」をおこなった後に、文学的文章の学習をおこなう。文学的文章の学習には、「新旧ドラえもん比較」の学習を組み込む。 メディアの表現の学習と文学教材の学習とをつなげる観点を説明したり、示唆したりしない。
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