研究概要 |
はじめに 本研究では,Cs^+,Sr^<2+>が可溶性であるという性質に着目し,電気泳動法によりイオンの流動性を高め,吸着効果の最大化を計った.吸着材としては,Na型ベントナイト,アパタイト,ゼオライトの3種を用いた.電流値は人体への深刻な影響の出ない程度の0.05A~0.10Aとし,Cs^+,Sr^<2+>は放射性物質の替わりに市販の試薬を使用した。溶液は酢酸アンモニウムを用いた.電圧は10V~15V程度とし,Cs^+,Sr^<2+>を砂中に撹拌して設置し,通電時間は0時間~48時間とした. Cs+吸着実験結果 定量分析は原子吸光分析法を用いた.通電時間が長いほどCs^+の吸着量が増加し,また,電流を大きくした場合も吸着量が増加する傾向が見られた。電場により引き寄せられるイオン量が変化するためと考えられた.アパタイト,ゼオライト,ベントナイトの3鉱物の比較では,ベントナイト吸着量が最も多かった. Sr^<2+>吸着実験結果 定量分析には,ICP発光分析法を用いた.アパタイト,ゼオライト,ベントナイトの3鉱物の比較では,ベントナイトの吸着量が最も多かった.但し,ベントナイトとアパタイトの吸着量の差は小さかった,また,通電時間を長くするとCs^+同様,Sr^<2+>の吸着量が増加した.吸着材なしの実験ではSr^<2+>の量が増えなかった.原因として,Sr^<2+>の炭酸化が考えられた. まとめ 通電ありとなしでは,通電ありの方が多く吸着され,電気泳動法の有効性を確認することができた.吸着にはベントナイトが優れており,通電時間を長くすることや電流を大きくすることによって,吸着効果が大きくなる傾向が見られた.また,Sr^<2+>については炭酸化が起こりやすいことがわかった.炭酸化は,炭酸ナトリウム等の溶液との反応だけではなく,自然状態でも空気中の二酸化炭素と反応して発生してしまうため,Sr^<2+>の吸着自体が非常に困難であると考えられた.精度については,イオン干渉が発生し,Cs^+とのイオン交換により溶出される問題が生じた.今後の課題として正確な定量するため,高精度の分析法の確立が必要である.
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