研究目的 酸化物イオン伝導体の伝導度はドープするカチオンにより大きく変わることが知られており、カチオンをドープしたことにより変化する局所構造を解析することは、イオン伝導プロセス解明のために重要である。本研究の目的はセリア系酸化物伝導体において、ドープするカチオン量に伴い変化する酸素欠陥量と局所構造変化の関係を固体NMR法によって解明するものである。 研究方法 測定に使用するNMR装置は日本電子製ECA-600を用いた。測定法は試料を高速回転させて測定するMAS(Magic Angle Spinning)法を用い、プローブは1.3mmφの超高速MASプローブを使用した。1.3mmφプローブは48kHzまで試料を高速回転させることが可能で、より精度の高い解析が可能である。 研究成果 (Ceo_2)_<0.8>(Y_2O_3)_<0.2>についてO-17MQ-MAS NMR測定を行った。解析結果を用いてピークシュミレーションを行い、各酸素サイトの四極子定数を算出した。ここで算出した四極子定数を用いて(CeO_2)_<0.8>(Y_2O_3)_<0.2>のO-17MAS NMR測定結果のピーク分離を行った。その結果、一次元のO-17MAS NMR測定のみで解析するよりもより精確なピーク分離を行うことが可能となり、I>1/2核のNMR測定において四極子の影響でピークの重なりが見られる場合の解析方法として有効であることを確認した。しかし、(CeO_2)_<0.8>(Y_2O_3)_<0.2>以外の組成については、O-17MQ-MAS NMR測定の条件設定に時間を要するためまだ達成しておらず、今後の課題である。
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