ケイ酸質肥料の施肥は、各種作物の病害を抑制する効果が認められている。人体に安全なケイ酸塩鉱物であるナトリウムイオン挿入型スメクタイト(Na^+-Sm)に関しても、水耕栽培において添加すると、作物が細菌感染抵抗性を誘導することが以前の研究において明らかになった。しかし、スメクタイトによる細菌感染抵抗性誘導の報告はなく、詳細な検討が必要である。すなわち、スメクタイト固有の特性と作物の細菌感染抵抗性との間の関係を明らかにすることは、ケイ酸質肥料としてスメクタイトを用いる時の効果的な施肥条件を見積もるために重要である。スメクタイト固有の特性の一つは、負に帯電したケイ酸塩の層間に存在する陽イオンを置換できる陽イオン交換能である。そのため本課題では、スメクタイトの陽イオン交換特性が細菌感染抵抗性誘導に及ぼす影響について検討した。 土耕栽培に使用されるケイ酸質肥料は、主にカリウム(K)塩またはカルシウム(Ca)塩であり、強い病害抑制効果が報告されている。この報告を参考にし、本課題では、K^+イオンまたはCa^<2+>イオン挿入型スメクタイト(K^+-SmまたはCa^<2+>-Sm)を用意した。K^+-SmまたはCa^<2+>-Smを0.3g dm^<-3>の粉末濃度で添加し、水耕栽培を行ったところ、発芽後の実生の根に存在する細菌数は、Na^+-Sm添加の場合と同等で、細菌感染抵抗性に明確な差は認められなかった。したがって、スメクタイトのケイ酸塩層間に存在する陽イオンに関して、Na^+、K^+及びCa^<2+>イオン間では、細菌感染抵抗性に及ぼす影響に差はないことが分かった。この結果は、スメクタイトによる細菌感染抵抗性は、層間陽イオンよりもケイ酸塩層に依存することを暗示している。したがって本研究課題結果から、ケイ酸塩層の水への溶解特性が、スメクタイトの細菌感染抵抗性に影響を及ぼす効果的な因子となっている可能性があることを見出した。
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