研究概要 |
【研究目的】難治性疾患の多発性骨髄腫に対する新規治療薬であるレナリドミドは、非常に優れた効果を発揮するが、その体内動態は未解明な部分が多い。レナリドミドはin vitroにおいてP糖蛋白(P-gp)の基質であることが報告されている。P-gpには遺伝子多型が存在し、中でもABCB1 C3435T変異により薬物等の排泄は50%程度低下するとの報告がある。本研究ではレナリドミドの血中濃度動態と遺伝子多型(ABCB1 C3435T)の相関を検討することを目的とした。 【研究方法】本研究は、秋田大学医学部倫理委員会の承認を既に得ている。レナリドミドを服用中の再発・難治性多発性骨髄腫患者21名を対象とし、レナリドミド服用0,1,2,4,8,12時間後に採血を行い、血液サンプルを収集した。得られた検体について、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)定量方法を用いて血中濃度を測定した。また患者検体よりDNAを抽出し、PCR-RFLP法を用いてP-gpの遺伝子多型(ABCB1 C3435T)について解析した。 【研究成果】最高血中濃度到達時間は服用後1~4時間におよび、最高血中濃度は34.6~316.9ng/mlと非常に大きなバラツキをもって観察された。また血中濃度一時間曲線下面積(AUC)も患者間で大きな変動が認められた(191.8~1334.3ng・h/ml)。P-gpの遺伝子多型(ABCB1 C3435T)については14例の解析が終了し、C/Cが6例、C/Tが7例、T/Tが1例であった。これよりレナリドミドの投与量で補正したAUCとABCB1 C3435Tに関し検討した結果、C/C群とTアレル保持群の2群間に有意な差は認められなかった(34.9±20.0vs55.2±34.6ng・h/ml/mg,P>0.05)。今後更に例数を増やし検討を進めていく予定である。
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