血液がんに対する化学療法においては、造血細胞を標的とした細胞毒性薬を大量に使用するために、発熱性好中球減少症(FN)は必発の合併症となる。FNの治療には、アミノグリコシド系抗生物質(AGs)が用いられる。FNの治療に用いるAGsの投与方法には、1日数回に分けて投与する方法(MDD)と1日量を1回で投与する方法(ODD)があるが、有効性と安全性に関する結論が出ていない。そこで、本研究において、AGsの一つであるトブラマイシン(TOB)のMDDとODDの有効性および安全性に関してレトロスペクティブに検討した。 千葉大学病院血液内科において、FNの治療にTOBを投与した49例中、除外条件該当症例を除く18症例を対象とした。対象例を、1日2-3回投与(MDD)群(n=9)と、1日1回投与(ODD)群(n=9)に分けてベースラインに有為差が無いことを確認後に比較検討し、以下の結果を得た。 1)有効性に関する検討 a)血清CRP値:両群ともにCRP値は投与前後で有為に低下した。治療開始前後で50%以下に低下した例が、ODD群で6例、MDD群で4例であった。また50%以下に低下するに要した時間は、ODD群で5.2日、MDD群で7.8日だった。 b)体温:1日の平均体温が37℃以下に解熱した日数が3日以上継続した症例数は、ODD群、MDD群それぞれ、5および3症例であった。また、解熱に要した治療日数は、ODD群、MDD群それぞれ、4.2日、6.3日であった。 c)最近学的評価:対象18症例中5症例の血液より、緑納菌、大腸菌が検出されていたが、投与後の培養検査が行われておらず、評価できなかった。 2)安全性に関する検討 a)血清クレアチニン値(CRE):両群においてTOBの投与前後で変化はなかった。 これらの結果から、FNにおいても、MDD投与に比べてODD投与の方が有効性が高いことが示唆された。
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