研究課題
奨励研究
小児の白血病の治療は長い治療期間を要すること、成人に比較して体力また予備能が低いことなどから十分な制吐管理が必須であるが、小児がんの治療に伴う悪心・嘔吐の治療ガイドラインはなく、医師の経験に基づく治療が行われているのが現状である。5-HT_3受容体拮抗薬(5-HT_3 receptor antagonist, 5-HT_3RA)は、第4脳室最後野の化学物質受容体、および回腸の求心性迷走神経末端に発現するセロトニン受容体を遮断することにより制吐作用を発揮する薬剤である。5-HT3RAのひとつであるグラニセトロンは、本邦で最も使用頻度の高い薬剤であり、その効果はP-糖タンパク質(P-glycoprotein, P-gp)の遺伝子多型の影響を受けることが報告されているが、日本人における5-HT_3RAの効果に関するP-gpの遺伝子多型の検討はなされておらず、本邦において承認されている7剤の5-HT_3RAを選択する際の科学的根拠は得られていない。そこで本申請研究では、悪心・嘔吐の治療ガイドラインのない小児がん患者における制吐管理についての科学的根拠を得ることを目的とした。2012年4月1日~2013年1月31日の期間に、鹿児島大学病院・小児科の入院患者のうち5-HT_3RAを処方された患者は45人であり、オンダンセトロン、またはグラニセトロンが処方されていた。小児科医が5-HT_3RAを選択する際の科学的根拠はなく、また、特定の5-HT_3RAが無効の場合に他の5-HT_3RAへ変更するなどの対応は行っていないのが現状であり、5-HT_3RAを選択する際の科学的根拠の確立が急務であることが明らかとなった。さらに、対象が小児であることを考慮すると、患者が経験している主観的な悪心や食欲不振等の症状を正確に評価・測定する方法を確立することが重要であることが明らかとなった。
すべて 2012
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Journal of Dermatological Science
巻: 68 ページ: 19-24