研究目的:緩下剤としてひろく使用されている酸化マグネシウム(MgO)は、習慣性が無くかつ安価な薬剤であるが、腎機能低下患者では、慎重投与に指定され、その使用には注意を要する。腎機能低下の重症度とMgOの投与量による血清マグネシウムに対する影響を評価した報告はほとんどない。本研究では腎機能低下の重症度とMgOの投与量が血清マグネシウム(Mg)へ与える影響について調査し、腎機能低下患者における酸化マグネシウム製剤の適正使用を進める指標の作成を目的とした。 研究方法:長崎大学病院を受診した外来・入院患者で、2010年4月1日~2012年2月29日の間にMgO製剤の投与があり、かつ血清クレアチニン(以下Cr)および血清Mgの測定を行った患者を調査対象とした。対象患者のデータは、本院で使用しているNEC社製の電子カルテシステム(MegaOakHR)より抽出した。 研究結果:今回、MgO製剤を使用し、血清Mg値および血清Cr値を測定している患者6511例より、CKDステージ3以上の患者87例を対象に調査を実施した。eGFRと血清Mg値は、弱い逆相関にあることが示された。平均血清Mg値は、eGFR≧15のときには、正常範囲内であったが、eGFR<15では、異常範囲である3.1mg/dLまで上昇が認められた。正常範囲を超えた血清Mg値の割合は、eGFRが15ずつ低下することに異常値を示す割合は上昇し、eGFR<15では60%以上が異常値であった。これらのことから、CKDステージ3以下(eGFR<60)では、eGFRが低下するに従い、血清Mg値が異常高値を示す可能性が高くなり、eGFR<15では、心電図異常を示すといわれる血清Mg値6mg/dL以上になった症例が4件(2例)で認められた。これらのことから、eGFR<15の患者では、MgO製剤の使用に関して、eGFR≧15の患者と比較し、非常に慎重に使用する必要があることが示唆された。eGFR<15では、1000mg/日以上の投与量で、血清Mg値が6mg/dL以上になった件数が4件(2例)で見られたことから、eGFR<15の場合は、MgOの投与量は1000mg/日未満であることが望ましいと考えられた。
|