○研究背景・目的:ビンクリスチン(VCR)は非ポジキンリンパ腫(DLBCL)の世界的な標準治療として確立されているCHOP療法の一薬剤として広く用いられている抗悪性腫瘍薬である。DLBCLに罹患した場合、CHOP療法の治療強度を維持したまま治療を完遂することが第一目標となるが、最近では治療経過中にVCRによる重篤な末梢神経障害などの有害事象が出現し、治療強度を低下させざるを得ない状況が散見される。VCRによる有害事象が出現する要因として、ヒトにおいて血中濃度とVCRの抗腫瘍効果及び末梢神経障害作用の関連を示したデータが乏しいこと、感染症の発症予防目的で併用される新規抗真菌薬によりVCR血中濃度が上昇することや、さらにVCRの薬物代謝酵素がCYP3A4だけではなくCYP3A5も関与することが考えられるが、VCRの投与量設定に関してはこれらの影響を考慮した目安すらないのが現状となっている。我々はVCRによる有害事象発現率の軽減と治療強度の維持または向上を目指し、併用薬や遺伝子多形を影響因子に組み込んだ新たな投与設計方法として母集団(PPK)パラメータを構築することを目的とする。 ○研究成果:VCRおよびアゾール系抗真菌薬のイトラコナゾール、ボリコナゾール、フルコナゾールの測定方法の検討を行った。VCR測定に関してはHPLCでの測定方法の確立を試みたが、臨床濃度を検出するためには感度に限界があり、LCIMS等での測定方法の確立が必要と考えられた。一方、アゾール系抗真菌薬に関してはHPLCによりイトラコナゾール、ボリコナゾール、フルコナゾールの臨床濃度を検出可能な同時定量方法を確立した。
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