申請者は3系統のCD4陽性T細胞受容体(TCR)トランスジェニック(Tg)マウス(OT-II、TEa、2D2)の差異を明らかにすることを目的に、CD4陽性CD62L陽性のナイーブT細胞上における共刺激分子(CD28-B7ファミリー、TNF-TNFレセプタースーパーファミリー、Timファミリー)の発現につき、FACS及びmRNA定量解析によって比較した。解析の結果、共刺激分子の発現は3系統で大きく異なっていた。具体的には、OX40、4-1BB、B7-1、PD-L1、PD-L2やTimファミリー分子など多くの共刺激分子はOT-IIで高い傾向を認め、これはIFN-γ産生がOT-IIで高いこれまでの結果と一致するものであった。一方でICOSはTEaで高い傾向がみられ、ICOSが高発現しているT細胞ではIL-10産生が高いことが知られており、抗原刺激時のTEaのIL-10産生を裏付ける結果であった。T細胞に抑制性に働くCTLA-4は2D2で最も高く、異なる特異性の活性化T細胞と共培養した場合の2D2は非特異的な活性化が生じにくいことに関与していると考えられた。これらはOT-IIはエフェクター反応の出やすいナイーブT細胞(Effector skewedナイーブT細胞:EナイーブT細胞)、TEaは抑制性反応の出やすいナイーブT細胞(Regulatory skewedナイーブT細胞:RナイーブT細胞)、2D2は非特異的反応を起こしにくいナイーブT細胞(Difficult to response-ナイーブT細胞:DナイーブT細胞)と考えた申請者のこれまでの結果と合致するものであった。 ヒトにおいて、各ナイーブT細胞サブセットの割合の偏りが、健常人と関節リウマチや全身性エリテマトーデスなどの自己免疫疾患患者においてみられる可能性があり、本研究の結果は自己免疫疾患の病態の理解につながると考えられた。
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