研究概要 |
肝臓EOB-MRIは,従来の細胞外液性造影剤による血流診断に加え,肝細胞特異性を有することから,肝細胞機能を反映した画像が得られ,血流診断では捉えることができなかった早期肝細胞癌も捉えることができる.しかしながら,慢性的な肝疾患に伴う肝機能低下は,造影剤の集積不良の原因となり,肝細胞相における病変検出に影響を及ぼす可能性がある.この問題に対し,肝臓EOB-MRI検査にPSIRによる撮像を試みる,本研究の目的は,肝臓EOB-MRIの肝細胞相におけるPSIRの臨床的有用性の評価である. 肝臓と病変を模擬したファントムを用い,呼吸停止を想定したPSIRの最適な撮像条件を検討した.その結果,反転時間を250msecと短くしても,信号極性の反転がなく,撮像時間の短縮が可能であった.また,データ収集時間を250msec以下にすることで,画像上のアーチファクトが減少した.これら撮像条件を最適化することで,高い空間分解能を維持したまま,一回の呼吸停止で肝臓全体を撮像可能であった.次に,肝臓EOB-MRI検査104症例を対象に,肝細胞相にてPSIRの撮像を施行した.従来法であるe-THRIVEと比較し,PSIRの有用性を検討した.その結果,PSIRにおける肝臓の信号強度と造影剤の集積程度に相関が認められ,画像の信号強度から視覚的に造影剤の集積程度を推測可能と考えられた.また,PSIRの肝細胞相における肝-病変コントラストは,e-THRIVEに比べ向上し,統計学的有意差(P<0.05)を認めた. 肝臓EOB-MRIの肝細胞相におけるPSIR画像は,IR pulseにより背景肝の信号を抑制することで,subtraction画像と同様に造影剤の集積程度を視覚的に推測できる.また,高い肝-病変コントラストを有するため,造影剤の集積不良で問題となる病変検出能を向上させる可能性が示唆された.
|