【研究目的】 自殺に用いられる農薬のうち比較的使用例の多いカーバメイト系農薬(CAR)について、救急医療や検視の現場で使用できる簡易検査キットの開発を行った。 【研究方法】 簡易検査キットは扱いやすい検知管方式とした。検知管はアルカリ条件でN-メチル-O-アリルエステル型CARが、薄層クロマトグラフィの発色試薬として用いられているρ-ニトロベンゼンジアゾニウムフルオロボレート(NBDF)と反応し発色することを利用し、ガラス管中にアルカリ層、NBDF層、発色確認層を有する構造とした。アルカリ層には水酸化ナトリウムを用いた。NBDF層にはNBDFを1%含有する担体を用い、アルカリ層との間に保護層を設けた。NBDF層の後にはCARが反応した色を確認し易くするための空間を設け、続け〓イ砂のみの層を配置し、溶液の色とケイ砂に着色した色の両方で確認できるようにした。使い方は次のように行う。検知管の両端をカットし出口側を吸引ポンプに接続する。入り口側を飲み残し等の試験溶液に浸しポンプのハンドルを引きながら溶液を吸引する。NBDF層通過後の溶液色を発色確認層で確認する。今回用いたN-メチル-O-アリルエステル型CARのうち、NACは青色系統、それ以外は赤系統に発色した。検出限界は約50μg/ml~250μg/mlであった。しかし、O-アリルエステル型構造を持たないメソミルについては発色原理上、検知することはできなかった。そこで、メソミルがアルカリで加水分解されるとメチルアミンが発生することを利用し、今回開発した検知管の後ろにメチルアミン検知管を接続、メチルアミン検知管の変色を確認することにより、メソミル製剤であるランネートも検知できるようにすることができた。 【研究成果】 本簡易検査キットは、検知管方式で操作が簡便、短時間で結果が得られるため、救急医療や検視の現場での使用に適していると考えられる。
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