| 研究課題/領域番号 |
24H00126
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| 研究種目 |
基盤研究(A)
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| 配分区分 | 補助金 |
| 応募区分 | 一般 |
| 審査区分 |
中区分4:地理学、文化人類学、民俗学およびその関連分野
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| 研究機関 | 東京都立大学 |
研究代表者 |
吉田 圭一郎 東京都立大学, 都市環境科学研究科, 教授 (60377083)
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| 研究分担者 |
澤田 佳美 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 主任研究員 等 (00963802)
手代木 功基 金沢大学, 学校教育系, 准教授 (10635080)
濱 侃 千葉大学, 大学院園芸学研究院, 助教 (10851579)
比嘉 基紀 高知大学, 教育研究部自然科学系理工学部門, 准教授 (60709385)
石田 祐子 神奈川県立生命の星・地球博物館, 企画情報部, 学芸員 (80846725)
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| 研究期間 (年度) |
2024-04-01 – 2028-03-31
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| 研究課題ステータス |
交付 (2025年度)
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| 配分額 *注記 |
47,190千円 (直接経費: 36,300千円、間接経費: 10,890千円)
2025年度: 11,310千円 (直接経費: 8,700千円、間接経費: 2,610千円)
2024年度: 13,780千円 (直接経費: 10,600千円、間接経費: 3,180千円)
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| キーワード | 気候変化 / 山地植生の境界域 / 植生帯移動 / 森林動態 / UAVレーザー測量 |
| 研究開始時の研究の概要 |
最近の研究から,気候変化による山地植生の分布移動は地形に応じて複雑なものになることが分かってきた.しかし,森林では樹冠により遮蔽されるため,広範囲で詳細な地形や植生の3次元情報を取得することが困難であった.そこで本研究では,日本のさまざまな山地植生の境界域を対象に,無人小型航空機による高密度レーザー測量を実施し,高精細な地表面および植生の3次元情報を取得する.そして,現地の植生データと関連づけることで,地形により異なる森林動態を把握し,地形に応じた山地植生の境界移動プロセスを解明する.
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| 研究実績の概要 |
本研究では,気候変化にともなう山地植生の分布移動を検討するため,山地斜面の植生帯境界を対象に,1)無人小型航空機により高精細な地表面および植生の3次元情報を取得し,2)地形と対応した植生変化とその駆動力となる森林動態を明らかにし,それらを関連づけることで,3)地形により異なる山地植生の境界移動プロセスを解明することを目的としている.令和6年度は,以下の調査・研究を実施した. 利尻島では,森林限界付近において植生調査におけるUAVリモートセンシングの活用に関する研究を進め,ササに覆われた地表面の計測手法や樹種判別手法を提案した.また,現地調査から,密なササに覆われた場所では樹木の更新が抑制されており,ササ草原との競合関係が森林限界の移動に関与することを明らかにした.薬師岳南斜面では,現地調査により標高に沿った林分構造の変化を明らかにした.主要構成種であるブナは標高の上昇に伴って幹数密度と個体サイズが低下する一方,オオシラビソは個体サイズが増加していき高標高で優占する傾向がみられた.仙台・鈎取山国有林では,永久方形区の再測を2021年に行い,60年間の植生構造と種組成の変化を明らかにした.特に,常緑の低木種が増加し,森林の階層構造が発達していることを示した.函南原生林では,空間解析から常緑広葉樹と落葉広葉樹との種間相互作用を明示し,植生帯境界の形成プロセスを推察した.また,高精細な林冠モデルを作製し,地形に応じた樹高分布を検討した.富士山では,現地調査から森林限界付近の植生動態を把握するとともに,取得した高精細な地表モデルを統合して解析した結果,森林限界付近に生育するカラマツが微地形に影響を受けて分布していることを明らかにした.石鎚山では,昭和初期の森林植生調査データを入手し,現在の植生図と比較した結果,植生帯境界の大きな変化は確認されなかったことが分かった.
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| 現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画した調査対象地全てでの現地調査に加えて,利尻島,函南原生林,富士山では,無人小型航空機で取得した地表面および植生の3次元情報を活用し,植生帯境界における植生変化や森林動態を明らかにしつつある. 利尻岳の森林限界では,UAVリモートセンシングにより,地形と植生分布の関係を精査し,森林限界の動態について検討している.また,LiDAR-SLAMを用いて樹木の3次元点群データを取得し,現地調査結果と組み合わせることで,本手法の適用可能性と有効性を確認できた.薬師岳では,標高勾配に沿った森林構造の変化を明らかにしつつ,高精細な地表面および植生の3次元情報を取得し,詳細な解析を進めている.仙台・鈎取山国有林では,60年間にわたる森林動態に関する解析結果を学術論文としてまとめたほか,樹種別の植生動態を把握する目的で,既存の永久調査区の拡張整備を進めている.函南原生林では,森林の更新動態にかかわる種間相互作用を明らかにするとともに,地形条件に応じた樹高分布の特徴を踏まえて,将来的に想定される植生帯境界の移動についての検討を進めている.富士山では,過去の調査データが蓄積されている範囲で再調査を行い,微地形と対応づけた長期的な植生変化を明らかにしつつある.石鎚山では,これまでに取得してきた年輪データの解析を進めるとともに,新たな現地調査およびUAVによる3次元情報の取得地点を決定した.これら各調査地での研究に加えて,日本の野生植物普通種2260種について,複数の温暖化シナリオを用いた分布の将来予測に関する研究成果を国際誌に投稿した. これらの成果は,関連する国内外の学会で発表するとともに,学術論文としての投稿やその準備を進めている.令和6年度は,全ての調査地点で計画通りに調査研究を実施し,明確な成果が得られたことから,「おおむね順調に進展している」と評価した.
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| 今後の研究の推進方策 |
令和7年度は各調査地において,以下のような調査研究を実施する予定である. 利尻島では,UAVリモートセンシングを用いた,植生に覆われた地表面の地形計測手法に関する解析を進めるとともに,ササ草原における樹木の実生・稚樹調査を行い,森林限界を構成する樹種の更新動態を明らかにすることで,気候変化にともなう森林限界の分布移動を検討する.薬師岳では,標高傾度に沿って設置した調査区において,主要構成種の更新状況を把握するための実生・稚樹調査を実施する.あわせて,過去の空中写真の判読や,無人小型航空機により2024年に取得した画像の解析を通じて,常緑針葉樹の分布変化について地形と関連づけながら検討を進める.仙台・鈎取山国有林では,永久調査区を拡張し,地形と関連づけた構成樹種の更新動態にかかわる空間解析を実施する.函南原生林では,UAVリモートセンシングを活用し,植生帯境界の植生構造と地形との対応関係を解析することに加え,標高に沿ったギャップ更新の違いを明らかにし,種間相互作用を踏まえて植生帯境界の移動プロセスを検討する.富士山では,現地でさらに広範囲の高精細地理情報を取得し,近年の植生変化について地形との対応関係を解明するための調査研究を継続する.石鎚山では,植生帯境界を対象とした現地調査を行うとともに,UAVリモートセンシングおよび過去の植生図の判読を通じて,長期的な植生変化の解明を進める. 全ての調査地点においては,令和6年度に取得したデータの解析を進めるとともに,その成果を積極的に関連学会で発表し,国際的な学術雑誌等での公表を目指す.
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