| 研究課題/領域番号 |
24K00042
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| 研究種目 |
基盤研究(B)
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| 配分区分 | 基金 |
| 応募区分 | 一般 |
| 審査区分 |
小区分02010:日本文学関連
小区分02020:中国文学関連
合同審査対象区分:小区分02010:日本文学関連、小区分02020:中国文学関連
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| 研究機関 | 日本女子大学 |
研究代表者 |
田中 大士 日本女子大学, 文学部, 教授 (40722137)
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| 研究分担者 |
野呂 香 日本女子大学, 文学部, 研究員 (20528781)
乾 善彦 関西大学, 文学部, 教授 (30193569)
大石 真由香 岐阜聖徳学園大学, 教育学部, 講師 (40624060)
茂野 智大 筑波大学, 人文社会系, 助教 (40853057)
安井 絢子 九州女子大学, 人間科学部, 講師 (50881108)
新沢 典子 鶴見大学, 文学部, 教授 (60454162)
池原 陽斉 京都女子大学, 文学部, 准教授 (70722859)
甲斐 温子 静岡大学, 教育学部, 講師 (70985572)
景井 詳雅 京都府立大学, 文学部, 研究員 (80791508)
樋口 百合子 奈良女子大学, 大和・紀伊半島学研究所, 協力研究員 (90625493)
川上 一 国文学研究資料館, 研究部, 助教 (00984436)
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| 研究期間 (年度) |
2024-04-01 – 2028-03-31
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| 研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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| 配分額 *注記 |
18,720千円 (直接経費: 14,400千円、間接経費: 4,320千円)
2027年度: 4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2026年度: 4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2024年度: 4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
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| キーワード | 万葉集仙覚校訂本 / 禁裏御本万葉集 / 仙覚文永本 / 中院本万葉集 / 伊達文庫本万葉集 / 中世期の万葉集享受 / 文永三年本 / 禁裏御本萬葉集 / 仙覚の万葉集校訂思想 / 万葉集の伝来 |
| 研究開始時の研究の概要 |
万葉集の伝来は、中世期以降、鎌倉時代の仙覚校訂本によって行われてきたと考えられてきた。仙覚は、従来漢字本文に複数の訓があったものを、一つの訓に統一することを目指して校訂本を改良していった。これまでは、中世期にはこの仙覚の考えに沿って万葉集伝本は集約していったと考えられてきた。しかし、近年、複数訓をもつ禁裏御本がよく流布していたことが知られるようになった。本研究は、この禁裏御本が、従来考えられている以上に中近世期において重要視されており、その受容の様相は、本来仙覚が考えていた思想とは相容れないものであった事を明らかにする。
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| 研究実績の概要 |
本研究は、中世期から近世期にわたって万葉集流布の中心となった万葉集仙覚校訂本諸本の内、文永本と禁裏御本という性格の相異なった二つの伝本の使用状況を調査し、当時どのように万葉集が把握され、理解されていたのかを解明しようとするものである。 まず、禁裏御本については、2023年度末に開催されたシンポジウム「禁裏御本万葉集の解明」の内容を成文化した同名の論文集の作成に当たった。内容は、禁裏御本がどのように生まれたかという生成過程の検討からはじまり、その流布の状況、そして、禁裏御本の内容を書き入れた、いわゆる「中院本」の制作事情と流布の状況に到る。これらの内容は、これまでの禁裏御本の研究のほぼすべてを担ってきた『校本万葉集』(1925年)の記述を大幅に書き換えるもので、実質上中世期の万葉集享受の全体像を塗り替える内容となっている。ことに、中世後期の万葉集享受が、禁裏御本ではなく、それを利用した中院本によるものであったことを明らかにした画期的な発見であった。この論文集は、著者たちの数度の検討会を経て、全体を一貫した内容に整えた上で、日本女子大学総合研究所の刊行助成制度に応募し、2025年2月に助成の内定を受けた(2025年の4月に正式決定)。現在出版社を調整中であり、2025年度内に刊行の予定である。この論文集により、従来不明であった中世期の万葉集享受の実態が大きく解明される。 一方、仙覚校訂本の根幹である文永本についても、発見があり、研究分担者の野呂香により、新たな文永三年本の伝本の報告があった(「宮城県図書館伊達文庫蔵『万葉集』について」上代文学第132号 2024年4月)。これまでわずか3本であった文永三年本のしかも完本が見出された意義はきわめて大きい。しかも、この伝本は、先述の「中院本」とも深い関係にあり、この点、野呂によって先の論文集で言及されている。
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| 現在までの達成度 |
現在までの達成度
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初は、2024年度に2023年度末に行ったシンポジウムに基づき禁裏御本万葉集の論文集を作り、禁裏御本の生成過程、制作者である今川範政の文学活動、禁裏御本の復元の試み、禁裏に於ける保存と流布の様相、禁裏御本の内容を書き入れた、いわゆる「中院本」作成の経緯など総合的に解明して行く予定であった。予定通り、論文集は出来上がったのだが(未刊行)、内容は予想を超えたものになった。 ひとつは、小川剛生による論文が、禁裏御本の奥書を読み直し、底本と対校本との位置づけを従来とは反対であることを明らかにしたことである。このことにより、禁裏御本の成り立ち、復元への途が従来とはかなり異なったものになると予想される。 二つ目は、伊達文庫本万葉集の発見である。この本は、現存する稀少な文永三年本の伝本であったのだが、それ以外にもこの本が禁裏御本の内容にきわめて近く、禁裏御本の構成要素の一つである文永三年本は、まさに当面の伊達文庫本のような本ではなかったかと推測されることである。この発見により、隔靴掻痒の体をなしていた禁裏御本の作成の過程が従来より高い精度で復元できる可能性が出てきた。 三つ目は、禁裏御本の解明は、中世期の貴族の日記を渉猟することで大きく前進したわけであるが、当面の論文集作成の過程で、宮内庁書陵部から公開され始めた桂宮文書の中から万葉集関係の書状を徹底的に調べ上げ、その事により、「中院本」生成の過程が明確に浮かび上がった点である。これにより、禁裏御本の流布は、禁裏御本自体より、その内容を書き入れたいわゆる「中院本」の段階で飛躍的に広がったことが判明した。 以上、論文集の成果は上記以外にも数多くあり、論文集以前と比べると、禁裏御本についての知見は比べようもないほど拡大している。今後は、この深い鍬入れの成果を生かし、本研究の目的である中世期の万葉集享受の実態を明らかにして行こうと考える。
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| 今後の研究の推進方策 |
2024年度作成の論文集「禁裏御本万葉集の解明」(未刊行、2025年度に日本女子大学刊行助成制度により刊行予定)により、禁裏御本万葉集の生成過程に見直し、構成要素である伝本の発見、流布の様相の大幅な見直しなど従来の学説をほぼすべて塗り替えるような発見があった。これらの発見は多岐にわたり、まだ十全に全体像が把握しきれない現状にある。しかも、それぞれの発見は、全体に有機的に結びつき、一つの発見が結果としてこれまでの認識を大きく変えてしまう可能性を持っている。 今後は、まずこの論文集の成果を冷静に見直して、それらの発見のもつ可能性を明確にしてゆく事が重要となる。とくに以下の二つの点が重要であろう。 ①禁裏御本は、根幹となる伝本が未発見であるため、従来も復元の試みが行われてきた。しかし、今回の論文集での数多い発見により、様々な認識が変更を強いられることとなった。これらの認識の変更を踏まえ、今一度禁裏御本の姿を復元する試みを行う必要がある。 ②禁裏御本を廻る中世後期、近世期の万葉集享受の様相は、従来の学説を更新するだけでなく、本研究グループの当初のもくろみをも越えている。本研究が当初想定していた、禁裏御本と仙覚文永本との対立という枠組みすら実際の状況を十分に反映していない可能性も出てきた。禁裏御本を廻る享受の実態を十分に明らかにした上で、中世期から近世期に渡る万葉集の享受をどのように描くべきか、新たな枠組み作りを行う必要がある。
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