| 研究課題/領域番号 |
24K00298
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| 研究種目 |
基盤研究(B)
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| 配分区分 | 基金 |
| 応募区分 | 一般 |
| 審査区分 |
小区分07080:経営学関連
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| 研究機関 | 関西学院大学 |
研究代表者 |
岡田 克彦 関西学院大学, 経営戦略研究科, 教授 (90411793)
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| 研究分担者 |
宇野 毅明 国立情報学研究所, 情報学プリンシプル研究系, 教授 (00302977)
月岡 靖智 関西学院大学, 商学部, 准教授 (50736709)
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| 研究期間 (年度) |
2024-04-01 – 2027-03-31
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| 研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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| 配分額 *注記 |
18,200千円 (直接経費: 14,000千円、間接経費: 4,200千円)
2026年度: 5,330千円 (直接経費: 4,100千円、間接経費: 1,230千円)
2025年度: 5,330千円 (直接経費: 4,100千円、間接経費: 1,230千円)
2024年度: 7,540千円 (直接経費: 5,800千円、間接経費: 1,740千円)
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| キーワード | 大規模言語モデル / 機械学習 / 行動ファイナンス / 非財務情報 / 企業価値評価 / テキストマイニング |
| 研究開始時の研究の概要 |
企業価値は基本的には公開情報がすべて反映されたものとして市場で評価されるが、昨今は財務情報以外の重要性が年々高まっている。具体的には、有価証券報告書の事業等のリスクの記述内容や、統合報告書の書かれ方、あるいはコーポレート・ガバナンス報告書等のテキスト情報による企業情報が価値評価に影響を与えている。こうしたテキストデータの分析は、巨大なデータで訓練(事前学習)された高度に複雑な LLMによって、従来の自然言語処理よりも格段に精緻に実施することができるようになった。この新技術を援用し、これまで明確にされていない非財務情報と企業価値との関連性を定量的に明らかにする。
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| 研究実績の概要 |
本研究は、企業の公開情報としてのテキスト情報が企業価値の形成に与える影響について、定量的に検証することを目的としている。2024年度は、有価証券報告書の中でも経営者の視点が色濃く表れる「経営方針、経営環境および経営成績の分析(MD&A)」のセクションに注目し、過去10年分にわたる報告書を対象として、累積30万語を超えるテキストデータを網羅的に収集・解析した。従来研究では、Bag of Words(BoW)と呼ばれる単語の出現頻度に依拠した古典的手法に基づくものが主流であり、単語間の関係性から意味を抽出することはできなかった。しかし、近年急速に発展した大規模言語モデル(LLM)は、単語を数百次元の意味空間の中で捉えるよう学習されたモデルであり、文脈に依存してテキストの意味が変化する場合も、相当程度正確に把握することが可能になっている。こうした利点を活用し、本研究では、ChatGPT、Claude、Geminiなど複数の大規模言語モデルを導入し、それぞれのモデルが抽出するセンチメントを比較検討した。 分析の結果、LLMによってMD&Aの記述内容を精査し、将来展望についてのポジティブ度合いを横断的にランキングした時、高い企業群は、翌年の一年間において、負の超過リターンを示すことがわかった。とりわけClaudeを用いたセンチメント分析による分類は、翌年のリターンと強く相関することがわかった。その他のLLMの抽出するセンチメントについても類似の関連性が見られた。一方、文脈を考慮しない、単語ベースのセンチメント指標(BoWのセンチメント指標)を用いて同様の検証をしても、将来リターンとの関連性は見られなかった。これらの事実は、すでに公開された情報であっても、高度な情報技術を活用して分析することで、超過リターンが獲得できる、すなわち、市場の効率性が担保されていない可能性を示唆している。
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| 現在までの達成度 |
現在までの達成度
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、企業の開示情報としてのテキストデータが企業価値の形成に与える影響を定量的に検証することを目的としている。2024年度においては、有価証券報告書の中でも経営者の見解が比較的自由に表現される「経営方針、経営環境および経営成績の分析(MD&A)」セクションに注目し、過去10年分、累計30万語を超えるデータを収集・構造化した上で、自然言語処理による分析を実施した。従来のテキスト分析は、BoW(Bag of Words)に基づく単語出現頻度の集計が主流であったが、これらの手法では単語間の意味的関係や文脈の変化を捉えることができない。本研究では、ChatGPT、Claude、Geminiなど複数の大規模言語モデル(LLM)を導入し、それぞれのモデルが抽出するセンチメントスコアを比較検討した。その結果、MD&Aにおけるセンチメントをもとに企業をポジティブ度でランキングした場合、上位群に属する企業は翌年度に負の超過リターンを示す傾向があることが判明した。特にClaudeを用いた分類結果は、翌年の株式リターンと最も強い逆相関を示しており、他のLLMによるセンチメント指標も概ね同様の傾向を示した。一方、BoWベースのセンチメントスコアでは、将来リターンとの統計的関連性は確認されなかった。これらの結果は、既に市場に開示されている情報であっても、LLMを用いた高度な分析手法を導入することで、超過リターンの予測が可能であることを示唆しており、市場の効率性に対する重要な示唆を含んでいる。本成果の一部は、現在、海外の査読付きジャーナルに投稿中である。
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| 今後の研究の推進方策 |
今後の研究では、企業が対外的に公表する人的資本に関する記述と、実際の従業員による企業評価との整合性を検証するための実証的枠組みを構築・適用していく。具体的には、転職会議をはじめとする口コミ評価サイトとの連携を通じて、従業員による人的資本マネジメントに関する評価データの一部提供を受けており、今後はこのデータの解析を進める。 次に、収集した口コミデータに対して、BoW(Bag of Words)および大規模言語モデル(LLM)による自然言語処理を用いて内容の分類を行い、企業ごとに人的資本活用に対する内的評価を定量化する予定である。これと並行して、有価証券報告書中の「人材戦略」「人材育成」等に関する企業の対外的開示情報についても同様の方法で解析を行い、各企業の内外における記述内容の整合性を評価する。 最終的には、こうした突合結果(たとえば、対外的には積極姿勢を示しつつ、従業員からの評価は否定的といったケース)をもとに、企業パフォーマンス指標(株価リターン、Tobin’s Q、ROA等)との関連性を分析し、人的資本の実態と開示の乖離が資本市場にどのような影響を与えるかを明らかにしていく方針である。これにより、人的資本情報開示の実効性と、企業価値との結節点を解明することを目指す。
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