| 研究課題/領域番号 |
24K00574
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| 研究種目 |
基盤研究(B)
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| 配分区分 | 基金 |
| 応募区分 | 一般 |
| 審査区分 |
小区分13030:磁性、超伝導および強相関系関連
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| 研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
鬼丸 孝博 広島大学, 先進理工系科学研究科(先), 教授 (50444708)
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| 研究分担者 |
岩佐 和晃 茨城大学, 基礎自然科学野, 教授 (00275009)
藤 秀樹 神戸大学, 理学研究科, 教授 (60295467)
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| 研究期間 (年度) |
2024-04-01 – 2027-03-31
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| 研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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| 配分額 *注記 |
18,720千円 (直接経費: 14,400千円、間接経費: 4,320千円)
2026年度: 5,070千円 (直接経費: 3,900千円、間接経費: 1,170千円)
2025年度: 5,070千円 (直接経費: 3,900千円、間接経費: 1,170千円)
2024年度: 8,580千円 (直接経費: 6,600千円、間接経費: 1,980千円)
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| キーワード | 電気四極子 / 2チャンネル近藤効果 / 四極子秩序 / 非フェルミ液体的挙動 / 中性子散乱 / 核磁気共鳴 |
| 研究開始時の研究の概要 |
1980年に理論的に提案された多チャンネル近藤効果は,未だ実証されていない。我々は,(4f)2配位の立方晶Y(Pr)Ir2Zn20において,電気四極子による2チャンネル近藤効果の可能性を提案したが,その微視的状態の解明には至っていない。そこで本研究では,磁気的な自由度をもつ(4f)3配位のY(Nd)Co2Zn20が示す非フェルミ液体的挙動について調べ,中性子散乱と核磁気共鳴による磁気揺らぎの観測から,2チャンネル近藤効果の微視的状態を明らかにする。さらに,他の立方晶Nd化合物を対象とした研究への展開により,4f電子と伝導電子の相関の特異性を明らかにし,2チャンネル近藤効果の物理を構築する。
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| 研究実績の概要 |
1980年に理論的に提案された多チャンネル近藤効果は,未だ実験的に実証されていない。我々は,これまでに(4f)2配位のPrIr2Zn20における結晶場分裂準位と四極子秩序状態を中性子散乱によって解明し,四極子近藤効果が実現しうる物質であることを示した。またPrTr2Zn20 (Tr = Ru, Rh), PrNb2Al20における結晶場分裂準位スペクトルの特徴から,Prサイトの対称性の違いや伝導電子との混成の可能性について議論した。さらに,Y(Pr)Ir2Zn20において非フェルミ液体(NFL)的挙動を観測し,電気四極子による2チャンネル近藤効果の可能性を提案した。本研究では,磁気的な自由度をもつ(4f)3配位をとるNdTr2Zn20の非フェルミ液体的挙動について調べる。さらに,Pr, Ndを含む他の立方晶化合物に対象をひろげ,4f電子と伝導電子の相関による2チャンネル近藤効果の物理を構築する。今年度は,Nd希薄系Y(Nd)Co2Zn20の単結晶の電気抵抗率を,交流レジスタンスブリッジを用いて0.1 K以下まで測定し,理論モデルで予言されている単サイト効果による温度依存性を観測した。また,59Co核の核磁気共鳴の測定から,核磁気緩和率が磁場によって抑制されることが分かった。一方,Ga置換したNdCo2Zn18Ga2のCoサイトのNQR測定を行い,Coサイトの内部磁場がキャンセルされる磁気構造をとることが分かった。Ga置換によって幾何学的フラストレーションが緩和され,反強磁性秩序が安定化したと考えられる。NdCo2Zn20の非弾性中性子散乱では,4 K以上で準弾性散乱などの異常は観測されていない。一方で,Prが面心立方格子を組むPrCdNi4の単結晶作製に初めて成功した。磁気異方性から電気四極子が活性となること,また 1 K付近で明瞭な相転移を示すことを明らかにした。
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| 現在までの達成度 |
現在までの達成度
2: おおむね順調に進展している
理由
Nd希薄系における磁気的な2チャンネル近藤効果によって生じる非フェルミ液体 (NFL) 的挙動を観測し,磁気双極子の特徴的な揺らぎを捉えるために,以下の実験を実施した。Y(Nd)Co2Zn20の単結晶をフラックス法にて作製し,0.1 K以下までの極低温領域における電気抵抗率の微小な温度変化を,今回導入した交流レジスタンスブリッジを用いて精密に測定した。極低温・磁場中での測定は,液体ヘリウムで冷却して行った。Ndの系を対象として,中性子準弾性散乱と核磁気共鳴(NMR) の核スピン格子緩和率の測定により調べた。Y(Nd)Co2Zn20 に含まれる59Co核のNMRスペクトルから,4f3電子の磁気双極子と核スピンの結合状態を評価した。核磁気緩和率が磁場によって抑制されることから,非フェルミ液体的な振る舞いが磁場によって抑制されたと考えられる。また,比較検討のため,非磁性基底状態を持つY(Pr)Co2Zn20についても測定し,磁場中で核磁気緩和率の増大を観測した。中性子散乱実験については,JRR-3に設置されたT1-1 HQR三軸分光器を用いて,NdCo2Zn20の単結晶中性子回折実験を行なった。また,HER三軸分光器を用いて非弾性散乱スペクトルを測定した。T > 4 Kでは準弾性散乱などの異常は観測されていない。また,立方晶PrCdNi4の単結晶作製に初めて成功し,四極子秩序の磁場に対する異方性を明らかにした。さらに,四極子近藤効果を示しうるPrIr2Zn20などと同様の極低温物性を示す物質探索として,Pr3Tr4Sn13 (Tr = Co, Rh)の研究を推進している。先行研究によると,磁化率が低温まで増大するにも関わらず,0.2 K以下に磁気相転移が抑制されている。この原因として近藤効果あるいは磁気相互作用の競合が期待され,物質合成と結晶構造解析を進めた。
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| 今後の研究の推進方策 |
Ndの(4f)3電子による磁気双極子やPrの(4f)2電子による電気四極子と伝導電子の混成によって生じる2チャンネル近藤効果の微視的機構を解明するために,今後の研究の推進方策を以下に示す。まず,Y(Nd)Co2Zn20のNFL的挙動の組成や磁場に対する依存性を明らかにし,Pr希薄系における電気四極子によるNFL的挙動との相違点を捉える。極低温領域における電気抵抗率の微小な温度変化を,交流レジスタンスブリッジを用いて精密に測定する。また,四極子近藤効果の寄与が指摘されているPrIr2Zn20で見出された磁場誘起中間相の秩序変数を明らかにするために,磁場中での中性子回折実験をフランスのILL研究所にて行う。磁場誘起相にアクセスするために,希釈冷凍機と超伝導マグネットを組み合わせて測定する。Irが中性子の吸収体であるので,板状に加工した試料を複数枚並べて測定する。PrCdNi4の置換系(La,Pr)CdNi4の単結晶の作製に挑む。四極子秩序を元素置換によって制御し,NFL的振る舞いが現れるのか,組成と磁場に対する依存性について,比熱や磁化,電気抵抗の測定から明らかにする。また,同型構造をとる(4f)3配位のNdCdNi4の作製と物性測定にも展開する。これらの物質について,磁気構造やNFL的挙動に伴う量子揺らぎを観測するために,NMR測定や中性子散乱実験を行う。また,得られた単結晶Pr3Co4Sn13 (Tr = Co, Rh)における磁気励起を中性子非弾性散乱によって明らかにし,基底状態の多極子自由度の検証や低エネルギー磁気励起から磁気相転移の抑制機構に迫る。
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