| 研究課題/領域番号 |
24K00826
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| 研究種目 |
基盤研究(B)
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| 配分区分 | 基金 |
| 応募区分 | 一般 |
| 審査区分 |
小区分19020:熱工学関連
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| 研究機関 | 国立研究開発法人物質・材料研究機構 |
研究代表者 |
齋藤 明子 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 磁性・スピントロニクス材料研究センター, 主席研究員 (20426612)
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| 研究分担者 |
松下 琢 名古屋大学, 理学研究科, 講師 (00283458)
山口 明 兵庫県立大学, 理学研究科, 准教授 (10302639)
檜枝 光憲 東京医科歯科大学, 教養部, 教授 (30372527)
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| 研究期間 (年度) |
2024-04-01 – 2027-03-31
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| 研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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| 配分額 *注記 |
18,070千円 (直接経費: 13,900千円、間接経費: 4,170千円)
2026年度: 5,590千円 (直接経費: 4,300千円、間接経費: 1,290千円)
2025年度: 5,980千円 (直接経費: 4,600千円、間接経費: 1,380千円)
2024年度: 6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
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| キーワード | 極低温 / 超低温 / ナノ多孔熱交換器 / フォノン光学モード / ヘリウム量子液体 / 自由度 / 希釈冷凍機 / 量子コンピュータ / ナノ細孔熱交換器 |
| 研究開始時の研究の概要 |
超低温を生成する技術は、量子コンピュータや医療用磁気共鳴画像診断装置等の動作に不可欠な基盤技術である。本研究では、フォノン光学モードの自由度や、ヘリウム量子液体の自由度を活用した新概念の熱交換器を統合し、磁気雑音のない小型軽量で高性能な次世代の超低温冷凍機の実現を目指す。具体的には、超低温域における細孔空間でのHe量子液体の振る舞いの学理探求に基づき、ナノ細孔を有する多孔体熱交換器や、熱交換器と超流動Heのカピッツァ界面熱抵抗低減、熱交換器多段化を追求し、コンパクトな10mK超低温冷凍機の実現を図る。これにより、希少な3He/4He使用量低減を図ると共に、量子コンピュータ技術の発展にも資する。
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| 研究実績の概要 |
ハイブリッド10mK超低温冷凍機革新に向けて新規熱交換器の仕様設計や要素技術の研究を行い、令和6年度は、以下の成果が得られた。 ・ナノ多孔体・蓄冷材料および極低温熱交換器の作製と評価:ゼオライトをベースとする構造体の試作検討を行い、電子顕微鏡観察により、ナノ細孔構造が保持されていることを確認した。また、極低温熱交換器の圧力損失低減の観点から蓄冷材の新構造について検討を行い、ジャイロイド構造の適用可能性をシミュレーションで明らかにするとともに、微小模型の試作を重ねて課題抽出及び基礎検討を進めた。 ・ナノ多孔体熱交換器の性能評価:希釈冷凍機の熱交換器は大きな比熱を持つ液体を内部に蓄えるため、熱抵抗が定常化するまでタイムラグがある。ナノ多孔体熱交換器は従来の銀粉熱交換器に比べ小型化できる長所があるが、シミュレーションの結果定常状態への緩和時間も10倍以上短く、常に液体が入れ替わる冷凍機に適したものであることがわかった。結果は国際学会で発表し現在論文投稿中である。 ・10mK希釈冷凍機とカピッツァ界面熱抵抗低減型熱交換器の開発:ハイブリッド化に向けて、まずヘリウム冷媒を用いた小型希釈冷凍機にナノ細孔体ステップ熱交換器を実装し開発を進めている。ナノ多孔体熱交換器の性能を最大化するために前段のTube-in-Tube熱交換器の調整が必要であるが、循環状態で13mK程度以下の温度が達成できる条件をおおむね特定することができた。またTube-in-Tube熱交換器内面を表面処理したカピッツァ界面熱抵抗低減型Tube-in-Tube熱交換器も試作し実装してみた結果、一定の熱抵抗低減効果があることが示唆された。この処理はTube-in-Tube熱交換器の流体抵抗等の条件も変えてしまうため、低減効果の定量化が今後の課題である。
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| 現在までの達成度 |
現在までの達成度
2: おおむね順調に進展している
理由
・ナノ多孔体・蓄冷材料および極低温熱交換器の作製と評価の項目では、ゼオライトをベースとする基礎検討が順調に進捗すると共に、極低温冷熱交換器用の蓄冷材として新構造のジャイロイドの適用可能性を、計算と実験から明らかにした。ここでは、3Dプリンティング技術を活用し、これまでにない微小セルサイズを持つジャイロイド構造体の試作に成功するなど、計画以上の進展があった。これは、大きな熱交換断面積と低い圧力損失を両立するための新たな基盤技術となり得る。 ・ナノ多孔体熱交換器の性能評価を緩和時間まで含めてシミュレーションを進めることで、熱緩和の面でも従来の熱交換器より高性能であることを確認し、より使用時の実情に即した熱交換器の設計が今後可能になるという進展があった。 ・小型希釈冷凍機にナノ多孔体ステップ熱交換器を実装し、その性能を最適化する前段のTube-in-Tube熱交換器の調整条件をある程度特定できたことで、目標とする最低温度10mKを実現するための設計指針が得られた。またTube-in-Tube熱交換器内面の表面処理が、低温で最も大きな問題であるカピッツァ界面熱抵抗の低減に実際に寄与することがわかったことは今後のTube-in-Tube熱交換器の小型化にも有用な進展である。
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| 今後の研究の推進方策 |
医療用MRIの高感度化や、量子コンピュータの素子冷却では、効率が高く、小型で、磁気雑音を抑えた超低温生成技術が希求されている。特に、量子コンピュータで求められる10mK超低温冷凍機の市場では、液体4He寒剤を用いずに蓄冷式極低温冷凍機で予冷段を冷却し、最低温生成には希釈冷凍機を用いる方法(所謂ドライ・タイプの冷却)の需要が高い。本研究では、フォノン光学モードやヘリウム量子液体の自由度を活用した新概念の熱交換器により、現行技術の限界を超えて、小型で高性能なハイブリッド10mK超低温冷凍機の革新を目指している。 今後、新規なナノ多孔体・蓄冷材料を用いた極低温熱交換器の作製を進め、細孔構造とヘリウム量子液体の振る舞いとの相関の知見に基づいて微細構造の適正化を図り、新規蓄冷材を具現化する。また、材料の熱特性を用いた冷凍シミュレーションにより、熱交換器性能の観点から材料最適化を図る。最終的には、磁気雑音のない極低温冷凍機を具現化し、2-7K領域での冷凍運転を実現する。 希釈冷凍機部の開発においては、現在の循環状態の達成温度は13mKであるが、循環をやめた場合一時的に10mK以下に冷却できることは実証されている。今後、Tube-in-Tube熱交換器の製作条件の精査や、ステップ型で使用しているナノ多孔体熱交換器のシミュレーション結果を用いた最適化等により循環による熱流入を低減し、実用的な目安と考えられる循環状態で10mK以下の最低温度を目指す。 また現在Tube-in-Tube熱交換器で検証している金属の表面処理によるカピッツァ界面熱抵抗低減技術は、幅広く応用可能な基盤技術となり得るため、低減効果の定量化、最適な表面処理の選別と再現性のある処理法の確立、室温と低温間の熱サイクルでの耐久性の検証、顕微鏡等による室温観察によって冷却時の性能を評価する方法の確立などを目指す。
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