| 研究課題/領域番号 |
24K01234
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| 研究種目 |
基盤研究(B)
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| 配分区分 | 基金 |
| 応募区分 | 一般 |
| 審査区分 |
小区分27010:移動現象および単位操作関連
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| 研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
林 文隆 信州大学, 学術研究院工学系, 准教授 (20739536)
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| 研究分担者 |
田中 秀樹 信州大学, 学術研究院総合人間科学系, 教授 (80376368)
田中 厚志 信州大学, 学術研究院工学系, 教授 (30417878)
金子 弘昌 明治大学, 理工学部, 専任准教授 (00625171)
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| 研究期間 (年度) |
2024-04-01 – 2028-03-31
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| 研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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| 配分額 *注記 |
18,460千円 (直接経費: 14,200千円、間接経費: 4,260千円)
2027年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2026年度: 4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2025年度: 6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
2024年度: 5,850千円 (直接経費: 4,500千円、間接経費: 1,350千円)
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| キーワード | イオン分離 / ナノシート / 層状化合物 / 積層膜 / フラックス法 |
| 研究開始時の研究の概要 |
速度差分離を基盤として選択的に目的のイオンだけを透過するナノシート積層膜の創製に取り組む。ナノシートのサイズ・組成,積層間距離,および有機/無機添加剤の量等を制御することで,飛躍的に膜の分離性能を高めることが可能か検討する。具体的には,フラックス法を利用して横方向サイズが最大サブミリサイズのナノシートを作製し,酸化グラフェン,有機・無機添加剤とともに積層する。クロスフロー式で膜性能を評価するとともに,電気化学インピーダンス測定や分子動力学計算により,どのような機構でイオンが分離されるか定量的に評価する。得られた知見は資源回収の分野で,分離工学のイノベーションをもたらすと期待できる。
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| 研究実績の概要 |
分離膜を用いたイオンの選択的分離は、資源の高純度精製や希少元素の回収を可能とし、環境およびエネルギー問題の解決に資する重要な技術である。中でも、ナノシート積層膜による分離技術は、省エネルギーかつ低コストであることから注目を集めているが、ナノシート単独で構成された膜ではイオン選択性や耐久性に課題が残る。 本研究では、層状化合物K4Nb6O17(KNO)とMoS2を用いた膜材料に表面修飾を施すことで、選択性と耐久性の向上を図った。KNOについては酸化グラフェンナノシート(GO)との積層膜を吸引ろ過法により作製し、滴下量の制御によって膜厚を40から60 nmの範囲で調整した。X線回折(XRD)により積層構造の形成を確認し、走査型電子顕微鏡(FE-SEM)観察では欠陥のない均一な膜表面が観察された。膜性能評価の結果、膜厚の増加に伴ってアルカリ金属塩の除去率が向上し、電気化学インピーダンス測定(EIS)により膜抵抗の増加が確認された。 また、MoS2結晶については固相反応法による結晶育成条件を検討し、得られた結晶をn-ブチルリチウム処理により化学的に剥離してナノシートを作製した。フラックス育成法をもちいると,サイズが数十ミクロンサイズの単結晶を得ることができた。また,従来の化学法で剥離することも確認できた。その後、ヨード酢酸による表面修飾を行い、X線光電子分光(XPS)測定によりC-S結合に起因するピーク(約165eV)を確認し、表面修飾の成功を示した。 これらの成果は、ナノシート積層膜の高性能化および機能制御に向けた基盤的知見を提供するものであり、高選択的かつ耐久性に優れた分離膜材料の開発に貢献する。
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| 現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度より、モリブデンカルコゲナイト(MoX2, X = S, Se, Te)のフラックス法による単結晶育成に取り組んでいる。高品質なMoX2大型単結晶の育成を目的として、結晶成長に影響を与える因子を検討した。得られた単結晶はn-ブチルリチウム(n-BuLi)ヘキサン溶液により剥離し、得られたナノシートの構造・特性評価を行った。 まず、MoS2の大型単結晶育成においては、NaCl、CsI、K2MoO4など複数のフラックスを用いて比較検討した。その結果、NaClを用いて1373Kで加熱することで、最大130ミクロンサイズのMoS2単結晶の育成に成功した。同様の条件をMoSe2およびMoTe2に適用したところ、MoSe2では20~40ミクロンサイズの均一な結晶が得られたが、MoTe2では結晶成長が不均一であり、準安定な1T相が生成された。 さらに、温度プロファイルの最適化も実施し、300C/hの昇温速度で1100Cまで加熱し保持した後、急冷することで、結晶の均一性とサイズ(最大130ミクロンサイズ)の向上が確認された。この最適条件をもとに、MoとSeまたはTe粉末を用いたフラックス育成を試みた結果、MoSe2では20から40ミクロンサイズの均一結晶が再現された一方、MoTe2では不均一な成長が見られ、準安定相の形成が顕著であった。結晶の剥離においては、n-BuLi処理により約2nm厚のナノシートの作製に成功したが、一部に損傷が見られた。現在、損傷の抑制およびナノシートの分散安定性の向上を目的として、イオン液体を用いた新たな剥離手法の導入を検討している。 以上の結果は、カルコゲン種の違いが結晶成長挙動や相形成に与える影響を示しており、MoX2系材料における成長メカニズムの理解と今後の高品質結晶の制御に資する知見を提供するものである。
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| 今後の研究の推進方策 |
昨年度にひきつづき,KNOやMoX2の高品質なナノシートの作製に取り組む。具体的には,イオン性液体をもちいて層状化合物結晶を剥離する。得られたナノシートを吸引濾過法により支持膜上に積層し、ナノシート積層膜を引き続き作製する。積層方法として,吸引ろ過法,Layer By Layer(LbL)法,スピンコーティング法に製膜する。配向制御するため,磁場あるいは電場を印加した条件で作製する。MoS2単体においてイオン選択性に関する報告はあるが、本研究ではさらに選択性および吸着性能を高めるため、オングストロームレベルでの2次元ナノチャンネル内部の精密設計に取り組む。具体的には、ナノシート表面への官能基修飾によって、目的とするイオン種に対する選択性の向上を図る。今回層間の有機・無機バインダーとして,Pb2+やAl3+等の多価金属カチオンやトリエタノールアミンあるいはポリスチレンスルホン酸等を用いる。ナノシートの表面修飾剤として,ヨード酢酸やヨードメタンスルホン酸ナトリウムを用いて,ナノシート表面を修飾する。(LbL)法で成膜するときには,正・負電荷の異なる溶液を分けて繰り返しディップコートすることにより作製する。 作製したナノシート積層膜の評価にあたっては、膜特性および活性層内部におけるイオン拡散挙動を解析するため、電気化学インピーダンス測定(EIS)を行う。EIS測定にはJones型セルをモデルとした2電極式セル(両極に白金黒処理を施したPt電極を設置)を使用する。測定はBiologic社製の高性能電気化学測定装置(SP-200)により実施し、以下の条件で行う:電解質溶液は10 mM;のMgSO4;測定電位Ewe = 0 V、周波数範囲1 Hz~4 MHz、交流電圧振幅10 mV、測定点数は8点/桁。
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