| 研究課題/領域番号 |
24K01347
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| 研究種目 |
基盤研究(B)
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| 配分区分 | 基金 |
| 応募区分 | 一般 |
| 審査区分 |
小区分29020:薄膜および表面界面物性関連
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| 研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
乗松 航 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (30409669)
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| 研究分担者 |
神田 晶申 筑波大学, 数理物質系, 教授 (30281637)
伊藤 孝寛 名古屋大学, シンクロトロン光研究センター, 准教授 (50370127)
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| 研究期間 (年度) |
2024-04-01 – 2027-03-31
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| 研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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| 配分額 *注記 |
18,590千円 (直接経費: 14,300千円、間接経費: 4,290千円)
2026年度: 4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
2024年度: 7,410千円 (直接経費: 5,700千円、間接経費: 1,710千円)
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| キーワード | 2次元物質 / 遷移金属炭化物 / 遷移金属ダイカルコゲナイド |
| 研究開始時の研究の概要 |
遷移金属ダイカルコゲナイド(TMD)は、超伝導や半導体などの興味深い物性を持つ2次元物質である。一方、遷移金属炭化物(TMC)は、近年トポロジカル半金属やトポロジカル超伝導体の候補として注目される材料である。本研究では、これらを組み合わせることで、トポロジカル超伝導やマヨラナ粒子、高移動度2次元半導体など、単体では実現できない新しい物性の発現を目指して研究を行う。
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| 研究実績の概要 |
本研究では、超伝導体や半導体としての興味深い性質を有する2次元物質である遷移金属ダイカルコゲナイド(TMD)と、トポロジカル半金属・超伝導などの優れた物性を持つ遷移金属炭化物(TMC)を組み合わせたヘテロ構造を作製することを目的とする。具体的にはまず、SiC単結晶基板上に、パルスレーザー堆積法を用いてWCやNbCなどのエピタキシャルTMC薄膜を形成する。これらTMC/SiC試料をSe雰囲気中で加熱することによって、表面にTMDを作製する。転写などのトップダウン手法ではなく、結晶成長によりTMDを得ることで、清浄な表面や界面を持つTMD/TMCヘテロ構造を作製できると期待している。初年度には、これまでに扱っていないTMCについて高品質な試料を得るための条件最適化、TMCをSe化するための装置の立ち上げを行った。その結果としてまず、パルスレーザー堆積法を用いて、高品質な炭化モリブデン(Mo2C)を得る条件を見出した。また、Se化装置として、化学気相成長(CVD)装置および真空封管装置を作製した。そのうち、CVD法によってWC薄膜に対してSe化処理を行った試料では、ラマンスペクトルにおいてWSe2薄膜に特有のピークが見られた。今後は、NbSe2およびMoSe2が形成される条件探索を行う。また、得られた一連のTMD/TMC試料に対して、層数や界面構造を直接調べるために高分解能透過型電子顕微鏡観察を、超伝導を含む電気的特性を明らかにするために低温電気伝導測定を、試料の電子状態を調べるために角度分解光電子分光測定を行う予定である。
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| 現在までの達成度 |
現在までの達成度
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、遷移金属炭化物(TMC)薄膜と遷移金属ダイカルコゲナイド(TMD)からなるTMD/TMCヘテロ構造を作製する。TMCとしては主に、炭化タングステン(WC)、炭化ニオブ(NbC)、および炭化モリブデン(Mo2C)を扱い、これらをセレン雰囲気中で加熱することで、それぞれWSe2、NbSe2、およびMoSe2を作製する。研究開始前に、WCおよびNbCについては、高品質な薄膜が得られる条件を見出していた。そこで、本研究初年度には、高品質なMo2C薄膜が得られる条件探索と、WCおよびNbCの表面をセレン化するための装置の立ち上げに取り組んだ。 Mo2C薄膜形成は、パルスレーザー堆積法を用いて行った。基板温度を500、1000、1500℃と変えてMo2Cを成膜し、反射高速電子回折測定および原子間力顕微鏡観察を行った。その結果、基板温度1000℃において、結晶性が良く表面形態の乱れの少ないMo2C薄膜が得られることがわかった。 一方セレン化に関しては、化学気相成長(CVD)法と真空封管法により行うための装置を立ち上げた。CVD法については、石英管に対して真空排気およびガス導入可能なフランジを準備し、小型管状炉で1000℃程度まで加熱できるように組み立てた。真空封管法については、基板とセレン粉末を石英管に導入して両端をバーナーで封じ切ることのできる装置を準備した。このようにSe雰囲気中で加熱することで、セレン化処理を行う。これらの装置を用いて、WC薄膜およびNbC薄膜の表面Se化処理を行った。NbCについては、Se化処理を行った試料に対してラマン分光測定を行ったところ、NbSe2に由来するピークは見られなかった。一方、真空封管法によりWCのSe化処理を行い、ラマン分光測定を実施したところ、WSe2に特徴的な250cm^-1付近のピークが見られた。
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| 今後の研究の推進方策 |
進捗状況で述べたように、Mo2C薄膜の形成とCVD装置・真空封管装置の立ち上げについて、概ね予定通り進展している。そこで今後は、Se化実験の高度化と物性・電子状態測定へと進んでいく。具体的にはまず、WSe2/WC試料の高品質化、NbSe2形成条件探索、MoSe2形成を行う。WSe2/WC試料の高品質化については、現状ではラマン分光測定でその存在が示唆されたのみであり、層数やその均一性については明らかではない。そこで、高分解能透過型電子顕微鏡によりWSe2の直接観察を行って層数と均一性を評価する。また、NbSe2/NbC系について、初年度にはNbSe2が形成されなかった理由は、NbC表面が強く酸化されていたためであると考えられる。そこで、CVD法により水素を含むガスを導入しながらセレン化処理を行う、あるいはハロゲンを含む雰囲気中でセレン化を行うことで、NbSe2形成を試みる。これらの知見は、MoSe2/Mo2C形成に対しても効果的に援用する予定である。Se化後の試料の基礎評価として、反射高速電子回折測定、原子間力顕微鏡観察、顕微ラマン分光測定、フォトルミネッセンス測定、および高分解能透過型電子顕微鏡観察を行う。 本研究で用いている炭化物は、ディラック半金属やトポロジカル超伝導体の候補として期待されており、表面のTMDによる特異な物性や電子状態の発現が期待される。そこで、得られた一連の試料に対して、低温電気伝導測定および角度分解光電子分光測定を行う。電気伝導測定は、共同研究者である筑波大学神田教授とともに、角度分解光電子分光測定は、同じく共同研究者である名古屋大学伊藤准教授とともに行う予定である。
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