| 研究課題/領域番号 |
24K01626
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| 研究種目 |
基盤研究(B)
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| 配分区分 | 基金 |
| 応募区分 | 一般 |
| 審査区分 |
小区分37010:生体関連化学
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| 研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
佐藤 玄 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 助教 (80782648)
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| 研究期間 (年度) |
2024-04-01 – 2027-03-31
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| 研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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| 配分額 *注記 |
18,460千円 (直接経費: 14,200千円、間接経費: 4,260千円)
2026年度: 4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2025年度: 5,070千円 (直接経費: 3,900千円、間接経費: 1,170千円)
2024年度: 9,230千円 (直接経費: 7,100千円、間接経費: 2,130千円)
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| キーワード | DFT / テルペン / 酵素 / 立体構造予測 / MD / MD計算 / 機械学習 |
| 研究開始時の研究の概要 |
DFT 計算を用いた反応機構解析を実施し, Variexenol A, B 生合成中間体の 3 次元立体構造や反応エネルギーなどを明らかにする. 続いて, AbVS のモデル構築を行う. AlphaFold2 を用いて AbVS のモデルを構築し, MD シミュレーションを行い酵素活性ポケットの形状を明らかにする. Rosetta を用いたドッキングシミュレーションを行い, 基質の初期配座固定に関わるアミノ酸残基を特定し, 構造的特徴を明らかにする. 最後に, 実験的検証に取り組む. 変異体酵素実験を行い, 計算化学による予測を実験的にも実証することを目指す.
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| 研究実績の概要 |
本年度は、Variexenolの生合成機構に関する研究を中心に据えつつ、これに関連する多様なテルペン環化酵素の反応機構についても幅広く解析を進めた。その結果として、計3報の査読付き論文を国際的な学術誌に発表することができた。具体的には、第一にトリテルペン化合物における7員環形成反応の反応経路を密度汎関数理論(DFT)計算により詳細に解析し、『The Journal of Organic Chemistry』誌に報告した。第二に、非典型的(non-canonical)なテルペン環化酵素を対象とした反応機構の解析に取り組み、この研究成果は『Chemical Science』誌に掲載された。第三に、Retigeraninの生合成経路をモデルとした逆生合成的アプローチの開発に成功した。未知の生合成経路を理論的に再構築する試みである。この研究成果は、天然物化学と計算化学を融合させた新たな方法論として注目され、『JACS Au』誌に掲載された。これらの研究成果は、テルペン類に代表される天然物の多様な炭素骨格の形成メカニズムに対して、理論的根拠に基づいた説明を可能とするものであり、酵素の触媒機構を分子レベルで理解するための足がかりとなる。 さらに、本年度は研究成果の社会発信にも積極的に取り組んだ。具体的には、山梨大学、金沢大学、横浜国立大学の3拠点にて招待講演を行い、Variexenolの生合成研究および関連するテルペン環化酵素の機構解析について講演を行った。これらの講演では、AlphaFold3を用いた酵素構造予測、DFTおよびRosettaを用いたドッキングシミュレーション、さらにはMD計算による立体配座の安定性評価に関する手法的展開についても紹介した。また、第66回日本植物生理学会年会においては、国際シンポジウム枠にて英語による口頭発表を実施した。
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| 現在までの達成度 |
現在までの達成度
2: おおむね順調に進展している
理由
Variexenol AおよびBの生合成機構について、密度汎関数理論(DFT)計算を用いて詳細な解析を行った。特にVariexenol Bの環化反応において、従来は反応に関与しないと考えられていたプレニル側鎖が、二級カチオンの安定化に寄与していることを明らかにし、天然物の生合成機構に関する新たな知見を得た。この成果は、Beilstein Journal of Organic Chemistry誌に発表した。また、Variexenol AとBの生成経路の分岐には、初期段階におけるプレニル側鎖の立体配座が重要であることを見出した。そこで、この初期配座の制御メカニズムを解明するため、構造予測とドッキングシミュレーションの組み合わせによる酵素ー基質複合体のモデル構築に取り組んでいる。 具体的には、Variexenol合成酵素AbVSの立体構造をAlphaFold3により予測し、そのモデルをもとにRosettaを用いたドッキングシミュレーションを実施した。テルペン環化酵素においては、基質との強い相互作用が少ないため、従来のドッキングでは合理的な複合体構造の構築が困難とされてきたが、本研究では疎水性相互作用や空間的な嵌合性を考慮することで、反応に寄与しうる立体的に妥当な酵素ー基質複合体構造を取得することに成功した。これにより、酵素による配座選択性の誘導や反応経路の制御機構に関する理解が大きく進展した。これらの成果については、現在論文としてまとめており、投稿準備を進めている段階にある。
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| 今後の研究の推進方策 |
これまでの研究において、密度汎関数理論(DFT)計算による反応機構解析およびAlphaFold3とRosettaを用いた構造予測とドッキングシミュレーションを通じて、Variexenol AおよびBの生合成に関与する合成酵素AbVSとその基質との酵素-基質複合体構造を構築することに成功した。特に、TerDock法を用いることで、テルペン環化酵素における疎水性相互作用や立体的嵌合を考慮した合理的な複合体モデルを取得できたことは、今後の分子認識機構の理解において重要な出発点となる。 テルペン環化酵素は、一般的に明確な水素結合やイオン対を基質と形成せず、むしろ酵素の立体構造によって基質の初期配座を空間的に拘束することで、環化反応における立体選択性や化学選択性を巧みに制御していると考えられている。本研究においても、Variexenol AとBの生合成経路の分岐において、プレニル側鎖の初期配座が生成物の選択性に深く関与していることが示唆されており、初期配座の制御メカニズムを解明することが、酵素による反応制御の全体像を理解する鍵となる。 この仮説を検証するため、今後は分子動力学(MD)計算を中心とした計算化学的手法を用いて、TerDock法により得られた酵素ー基質複合体の三次元構造をもとに、基質の初期配座がどのように安定化されているのか、また酵素側のどの部位が配座固定に寄与しているのかを詳細に検討していく予定である。具体的には、MD計算を用いて酵素ー基質複合体の時間発展をシミュレーションし、基質配座の動的変化や柔軟性を解析することで、構造的な拘束要素やエネルギー障壁の有無を評価する。また、エネルギー分解解析や接触解析などを組み合わせることで、配座の安定化に寄与する残基や構造モチーフを特定し、酵素がいかにして特定の反応経路へと誘導しているのかを定量的に明らかにすることを目指す。
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