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ガス体炭素基質ーCO2, CH4の微生物利用が水田土壌の物質動態に果たす機能の解明

研究課題

研究課題/領域番号 24K01654
研究種目

基盤研究(B)

配分区分基金
応募区分一般
審査区分 小区分38010:植物栄養学および土壌学関連
研究機関名古屋大学

研究代表者

村瀬 潤  名古屋大学, 生命農学研究科, 教授 (30285241)

研究分担者 アシルオグル ムハンメットラシット  新潟大学, 自然科学系, 助教 (30870456)
渡邉 彰  名古屋大学, 生命農学研究科, 教授 (50231098)
渡邉 健史  名古屋大学, 生命農学研究科, 准教授 (60547016)
沢田 こずえ  名古屋大学, 生命農学研究科, 特任助教 (60795285)
研究期間 (年度) 2024-04-01 – 2027-03-31
研究課題ステータス 交付 (2024年度)
配分額 *注記
17,810千円 (直接経費: 13,700千円、間接経費: 4,110千円)
2026年度: 4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2025年度: 4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2024年度: 8,970千円 (直接経費: 6,900千円、間接経費: 2,070千円)
キーワード水田 / メタン / CO2 / 光合成 / 酸化還元境界 / 水田土壌 / 酸化還元境界層 / 温室効果ガス / 微生物相互作用
研究開始時の研究の概要

水田は温室効果ガスであるメタンの重要な発生源の1つであるが、土壌の表層ではメタンの酸化が活発であり、大気への放出を抑制している。また水田土壌の表面では土壌藻類の光合成による二酸化炭素の吸収も活発である。メタンの酸化と二酸化炭素の吸収は、水田土壌表層で隣接して起こる微生物反応であり、相互に影響しながら炭素を中心とする土壌の物質循環や他の微生物活動に影響を与えていると想定される。本研究では、水田表層土壌における2つの温室効果ガスの微生物利用の実態と水田土壌生態系における意義を明らかにする。

研究実績の概要

本研究では、水田表層土壌における微生物基質としてCO2、CH4の代謝に注目し、その微生物利用の実態と水田土壌生態系における意義を明らかにすることを目的としている。
名古屋大学大学院生命農学研究科東郷フィールドの水田において、植生を避けてLEDライト付チャンバーを土壌に設置し、暗条件・明条件(光強度:800 micro-mol m-2 s-1)における土壌CO2フラックスを測定した。全70回の測定のうち、65回(93%)で明条件のCO2フラックスが暗条件に比べて低かったことから、土壌呼吸により大気へ放出されるCO2の一部が藻類の光合成により土壌表層で再吸収されたと推察した。土壌藻類によるCO2吸収速度(NPP)は、土壌呼吸速度(D flux)の0-60%(中央値:55%)を占めると算定された。すなわち、土壌呼吸で大気へ放出するCO2の半分以上が土壌表層の光合成により再度固定されること、土壌呼吸由来のCO2をすべて土壌表面で再固定しさらにその4倍以上の大気由来CO2を吸収する場合もあることが明らかになり、土壌の炭素循環において表層の光合成が極めて重要な役割を果たすことが示された。NPPは、D flux、温度(地温・気温)、水分(土壌水分含量・湿度・降水量)、Chlorophyll a量、水抽出性NH4+-Nと正の相関を示し、ランダムフォレスト回帰により、NPPに影響を与える因子としてD fluxと土壌水分含量の重要性が示された。
湛水水田土壌表層からのCH4放出に及ぼす光照射の影響を圃場観測により検証したが、短期的な効果は明らかではなかった。室内培養実験では、光照射による光合成活動に伴う溶存酸素濃度の上昇がCH4放出を抑制すること、その後光照射の停止に伴う光合成産物の分解(CO2放出)が進行することにより、CH4酸化が制限され放出が促進されることが示唆された。

現在までの達成度
現在までの達成度

2: おおむね順調に進展している

理由

水田土壌の深部で生成されたCO2およびCH4が、土壌表層において再び微生物によって利用されることが、フィールド調査および室内実験の双方によって明確に示された。特に注目すべきは、土壌表層に生育する藻類による光合成が、土壌呼吸によって放出されたCO2の一部を再固定し、その結果として炭素が再び土壌内に貯留されるという過程が明らかになった点である。これは、従来の炭素動態モデルには組み込まれてこなかった経路であり、土壌における炭素循環の理解に新たな視点をもたらす知見として高い学術的意義を有していると考えている。
さらに、藻類による光合成は、CO2吸収のみならず、湛水環境下における溶存酸素濃度の鉛直分布にも影響を及ぼすことが示された。この酸素供給の変化は、土壌表層で活性が高く、CH4の大気への放出を抑制する機能を担うメタン酸化細菌の活動にも間接的な影響を与える可能性があると考えられた。この仮説を検証するため圃場観測を実施したが、現段階では明確な相関は得られず、観測手法や解析技術の改善が今後の課題として残された。一方、室内実験では土壌藻類とメタン酸化細菌の相互作用についての可能性が示唆された。土壌藻類とメタン酸化細菌の相互作用については、酸素の影響以外にもさらに多角的に解析する必要があると考えられた。なお、溶存酸素濃度の昼夜変動は極めて大きく、酸化還元境界層の好気性・嫌気性微生物の生態を制御するであろうという今後の研究を進める上での作業仮説を支持する結果が得られている。
また、CO2およびCH4を直接または間接的に資化する水田微生物群については、予備的な消費速度の測定に基づき、安定同位体プロービング(SIP)法による詳細な解析が有効であることが確認されており、今後の研究展開に向けた基盤が整いつつある。なお、バイオマス測定についてはその手法の確立を含め検討段階にあり、次年度継続予定である。

今後の研究の推進方策

これまでに得られた研究成果および現時点で明らかになった課題を踏まえ、当初の研究計画をさらに発展的に推進していく。
土壌藻類の光合成とCH4酸化の相互作用については、室内のモデル実験においてその一部が明らかとなった。現時点では光合成による酸素の生成・供給の影響について考察しているが、酸素以外に光合成有機物の供給を通じてもCH4酸化に影響を及ぼしていると予想される。またCH4酸化により生産されるCO2は光照射下で光合成の基質となり、再び土壌中での炭素循環に組み込まれることも推定される。以上のような2つの温室効果ガスの代謝をめぐる相互作用は複数の要素が関係しており、要素還元的な手法を通じてそれらの関係を個別に解明していく予定である。
土壌からのCH4放出に及ぼす光の影響に関しては、圃場レベルでの観測では未だ結論に至っておらず、観測精度や手法の見直しが必要である。観測方法の再考や圃場観測と室内培養実験の中間のアプローチであるポット実験も導入し、より現実的かつ統制された条件下での検証を進める予定である。
CO2やCH4の消費速度に関する基礎的なデータが得られたので、これをもとに安定同位体プロービング法によるガス代謝微生物のバイオマスや群集構造の変動解析を実施する。また、吸収後の両ガスに由来する炭素の量的および質的な動態解析を進める。
さらに、光合成が酸化還元境界層における微生物群集に及ぼす影響を明らかにするため、光強度および酸素供給条件を制御した培養実験を通じて、湛水土壌の微生物の組成や機能特性の変化を解析することも視野に入れている。

報告書

(1件)
  • 2024 実施状況報告書
  • 研究成果

    (5件)

すべて 2024

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件)

  • [雑誌論文] 水田土壌の鉄の酸化還元研究の現在2024

    • 著者名/発表者名
      渡邉 健史、伊藤 英臣、高橋 嘉夫、清水 優希、小暮 敏博、光延 聖、大塚 重人
    • 雑誌名

      日本土壌肥料学雑誌

      巻: 95 号: 3 ページ: 161-166

    • DOI

      10.20710/dojo.95.3_161

    • ISSN
      0029-0610, 2424-0583
    • 年月日
      2024-06-05
    • 関連する報告書
      2024 実施状況報告書
    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] 土壌藻類の光合成は農地土壌からのCO2放出を減少させる2024

    • 著者名/発表者名
      田中智規、沢田こずえ、村瀬潤
    • 学会等名
      日本土壌肥料学会2024年度福岡大会
    • 関連する報告書
      2024 実施状況報告書
  • [学会発表] 土壌藻類による農地のCO2吸収に対する水分状態の影響2024

    • 著者名/発表者名
      田中智規、沢田こずえ、村瀬潤
    • 学会等名
      日本土壌肥料学会2024年度中部支部会
    • 関連する報告書
      2024 実施状況報告書
  • [学会発表] Ecology of microaerophilic iron-oxidizing bacteria in the iron redox cycle of paddy field soil2024

    • 著者名/発表者名
      Takeshi Watanabe
    • 学会等名
      The 4th International Conference on Black Soils Conservation and Utilization
    • 関連する報告書
      2024 実施状況報告書
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] 田畑輪換が水田土壌中の酸化還元反応に関わる微生物群集の動態に及ぼす影響の解析2024

    • 著者名/発表者名
      渡邉健史・小島久恵・松葉悠真・伊藤舞香・劉冬艶・海野裕晃・村瀬潤・土屋一成・浪川茉莉・髙本慧・戸上和樹・高橋智紀・西田瑞彦・浅川晋
    • 学会等名
      日本土壌肥料学会
    • 関連する報告書
      2024 実施状況報告書

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公開日: 2024-04-11   更新日: 2025-12-26  

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