| 研究課題/領域番号 |
24K02931
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| 研究種目 |
基盤研究(B)
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| 配分区分 | 基金 |
| 応募区分 | 一般 |
| 審査区分 |
小区分60060:情報ネットワーク関連
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| 研究機関 | 奈良先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
笠原 正治 奈良先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 教授 (20263139)
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| 研究分担者 |
原 崇徳 奈良先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 准教授 (70907881)
中畑 裕 奈良先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 助教 (50942067)
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| 研究期間 (年度) |
2024-04-01 – 2027-03-31
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| 研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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| 配分額 *注記 |
18,590千円 (直接経費: 14,300千円、間接経費: 4,290千円)
2026年度: 5,070千円 (直接経費: 3,900千円、間接経費: 1,170千円)
2025年度: 5,590千円 (直接経費: 4,300千円、間接経費: 1,290千円)
2024年度: 7,930千円 (直接経費: 6,100千円、間接経費: 1,830千円)
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| キーワード | ブロック・チェーン / インセンティブ・メカニズム / 合意形成アルゴリズム / 報酬罰則型投票メカニズム / 耐結託性 / 次世代分散型インターネット / 合意形成メカニズム / 投票型インセンティブ・メカニズム |
| 研究開始時の研究の概要 |
本研究ではブロック・チェーンの投票型合意形成における共謀結託問題に焦点を当て, 投票における結託行為の同定を試みるとともに, 不特定多数の参加者集団に対し, 正直な参加者の貢献に加えて悪意のある参加者さえもシステムに貢献する行動変容を誘発する投票型インセンティブ・メカニズムを創出し, 不特定多数の集団上で真正性を保証した情報サービスを提供する次世代分散型インターネットのブロック・チェーン基盤を確立する.
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| 研究実績の概要 |
本研究ではブロック・チェーンの投票型合意形成における共謀結託問題に焦点を当て, 投票における結託行為の同定を試みるとともに, 不特定多数の参加者集団に対し, 正直な参加者の貢献に加えて悪意のある参加者さえもシステムに貢献する行動変容を誘発する投票型インセンティブ・メカニズムを創出し, 不特定多数の集団上で真正性を保証した情報サービスを提供する次世代分散型インターネットのブロック・チェーン基盤を確立することを目指している. 2024年度は自律分散型組織DAOのガバナンスに着目し,一部のメンバーに権力が集中するク ジラ問題と,不正な結託によって投票結果が歪められてしまう談合問題について数理的な検討を行った.ここでは一部の参加者に投票力が集中することを抑止することが期待されているQuadratic Votingと呼ばれる投票制度に着目し,クジラと一般ユーザの効用を定式化した均衡問題を考え,数値実験によりQuadratic VotingはLinear Votingと比較して談合問題への耐性が低いことを定量的に示した.また,Quadratic Voting の耐結託性を向上させる方策としてVote Escrowed Token (veToken) を組み合わせた投票メカニズムを提案し,数値実験により,提案方式はクジラ問題を緩和しながら談合耐性を獲得できることを確認した. また,プライバシー保護の観点から,ユーザの匿名性を保ちつつリプレイ攻撃を防ぐゼロ知識証明手法についても検討を行った.具体的には,代理人を通じてリクエストを管理者に送信し,ゼロ知識集合所属証明によりその正当性を保証するとともに,代理人の識別情報を証明に結びつけることで再利用を防止する.この仕組みにより,スケーラブルなブロック・チェーン認証スキームを構築し,安全性とコストについて評価を行い,提案方式の優位性を定量的に確認した.
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| 現在までの達成度 |
現在までの達成度
2: おおむね順調に進展している
理由
ブロック・チェーンの投票メカニズムとして,昨年はDAOに着目した研究を展開した.具体的には,ガバナンストークンを大量に保有するクジラと呼ばれる参加者の存在がDAOの意思決定において実質的な権限を握ってしまうクジラ問題と,悪意のある参加者が賄賂と引き換えに自身に有利な提案に票を投じるように談合を行う談合問題について,Linear Voting と Quadratic Vorint の結託耐性を定量的に評価する検討を行った.具体的には,DAOには大量のトークンを保有した悪意ある参加者(クジラ)と,その他大勢の善良な参加者が存在していると想定し,善良な参加者の効用を定義した.DAOの意思決定における投票制度として Linear Voting と Quadratic Voting を考え,それぞれの投票制度の下で談合を行うためのコストを導出し,二つの投票制度の談合耐性を計算機シミュレーションにより比較した.また,トークンを一定期間ロックし,そのロック期間に応じた投票力を獲得する Vote Escrowed Token (veToken) と呼ばれる投票制度とQuadratic Votingを組み合わせた投票メカニズムを提案し,数値実験によって提案投票メカニズムがクジラ問題を緩和しながら Quadratic Voting よりも高い談合耐性を獲得していることを示すことができた. DAOガバナンスの談合耐性分析モデルでは,プロジェクトが1回だけ提案される状況を仮定し,参加ユーザが保有するトークンについては売買を行わないという限定した状況を検討していた.実際のDAOでは複数個のプロジェクトが提案され,プロジェクトの成否に応じてDAOの市場価値が変動し,加えて参加ユーザは自身の効用を高める手段としてトークンの売買を行なっている.現在はこの二つの制約を緩和する方向でDAOガバナンス数理モデルの拡張を検討している段階である.
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| 今後の研究の推進方策 |
今年度はブロック・チェーンのメンテナンスに関与するユーザの分散度合いを制御するための報酬共有スキームについて検討を行う.プルーフ・オブ・ステークに代表される合意形成アルゴリズムでは,ブロック・チェーンのメンテナンスに参加するバリデータが独立にブロックの正当性を検証し,投票することが欠かせない.ここではバリデータの共謀結託を同定するアプローチとして,トークン資産の公平性や賛成票・反対票の関係性を踏まえた共謀結託のしやすさ(結託容易性)の定量化を試みる.ステーキングを基にしたPoSで悪意のある参加者が共謀結託を行うには,賄賂による買収が中心と考えられる.そのため,投票者の保有トークン量分布は,結託容易性を判定する上で重要な指標となる.ここでは参加者の保有トークン量に対し,社会経済学で資産のばらつきを測るジニ係数に加え,51%制御を可能とする参加者の最小集合サイズを表すナカモト係数を活用し,保有トークン量を基にした参加者の結託容易性の定量化を試みる. また,投票行為における結託集合の同定を行うため,反対票グラフを用いた最大独立集合問題を考える.反対票グラフは,任意の2人の参加者の投票結果を比較し,異なる投票の場合はその参加者を表す頂点間に辺を張り,同じ投票の場合は辺を張らないことで構成されるグラフであり,グラフにおける独立集合とは,1つのグラフ内で互いに隣接していない頂点の集合である.ここではPoSの投票結果に対して反対票グラフを構成し,最大独立集合を検出することで結託集合の同定を試みる.最大独立集合問題はNP困難なため,higher-order ratio ヒューリスティックアルゴリズムや貪欲ランダム化適応探索手法といった近似アルゴリズム・発見的手法を用い,結託集合の同定を試みるとともに,近似アルゴリズムの精度についても計算機シミュレーションを通じて精査する.
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