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台湾におけるパブリック・ヒストリーの実践と日台の歴史認識:越境する視座の構築

研究課題

研究課題/領域番号 24K03162
研究種目

基盤研究(B)

配分区分基金
応募区分一般
審査区分 小区分80010:地域研究関連
研究機関一橋大学

研究代表者

洪 郁如  一橋大学, 大学院社会学研究科, 教授 (00350281)

研究分担者 赤松 美和子 (佐藤美和子)  日本大学, 文理学部, 教授 (00510653)
松葉 隼  早稲田大学, 社会科学総合学術院(先端社会科学研究所), 次席研究員 (10976012)
菅野 敦志  共立女子大学, 国際学部, 教授 (70367142)
清水 美里  名桜大学, 国際学部, 准教授 (70785550)
研究期間 (年度) 2024-04-01 – 2028-03-31
研究課題ステータス 交付 (2024年度)
配分額 *注記
18,590千円 (直接経費: 14,300千円、間接経費: 4,290千円)
2027年度: 5,460千円 (直接経費: 4,200千円、間接経費: 1,260千円)
2026年度: 4,810千円 (直接経費: 3,700千円、間接経費: 1,110千円)
2025年度: 4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2024年度: 4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
キーワードパブリック・ヒストリー / 歴史実践 / 歴史認識 / 台湾 / 博物館 / 日台関係 / 歴史記憶 / 日本の植民統治
研究開始時の研究の概要

本研究は、台湾におけるパブリック・ヒストリーの実践とそこでの日本の位置を地域研究の視角から解明する。日本の台湾統治の歴史をめぐる俗説の氾濫に対する、学術的な問題解決の方策を提起する。本課題の縦軸として、台湾のパブリック・ヒストリーにおける実践について、1博物館、2メディア、3教育という三つの領域につき、実地調査を行う。横軸として、日本の位置付けを焦点化し、日台間のパブリック・ヒストリー実践の連続性・越境性を可視化する。最終的に日台間の歴史実践をめぐる理論的フレーム・ワークを構築し、両地の教育活動や文化交流の現場に向け、学術的な知見に立った提言を行う。

研究実績の概要

初期段階では全体会議を踏まえ、本研究の中心概念および方法論、ならびに担当部門と部門間の連携体制を確認した。その上で、日台におけるパブリック・ヒストリーの実践の実態を明らかにするため、博物館・メディア・教育という三領域に分けて本格的な調査を開始した。
博物館に関する調査成果は、日本および台湾の二地域に大別される。現地調査により、それぞれの地域における日本と台湾の歴史に関連する文化施設が、いかにして重要人物の事績を叙述し、それを地域の歴史的文脈に位置づけているかを把握することができた。また、これらの文化施設が、他県や海外など外部からの来訪者に対して、自らの歴史を語る必要性やその方法論について、どの程度自覚しているかについても調査を行った。日本国内においては、群馬県、長崎県、佐賀県、福岡県を訪問対象とし、それぞれの文化施設における展示の方針や表現手法を視察した。一方、台湾でも、日本と同様の視点から、各地の文化施設における取り組みを把握・分析した。調査対象には、台湾歴史博物館、高雄市立歴史博物館、国立台湾博物館、国立台湾史前文化博物館、蘭陽博物館などが含まれる。メディアに関しては、台湾における文学作品、漫画、美術作品を対象とした基礎的な文献調査を行い、必要に応じて日本および台湾の両地域で関係者へのインタビューを実施した。教育分野に関しては、教科書分析に加えて、台湾の高等学校への訪問調査を行った。とりわけ大きな成果としては、台湾および日本の両地域において座談会および講演会を開催し、高校教員や台湾の大学教員との意見交換を通じて、教育現場における歴史教育の実践状況や課題を具体的に理解することができた点が挙げられる。
国際学術活動の一環として、本研究チームは台湾大衆史学協会と共催で二度の論壇を開催し、台湾と日本における大衆史学の諸課題について、双方の研究者の間で相互理解が深まった。

現在までの達成度
現在までの達成度

2: おおむね順調に進展している

理由

本年度は、「日台におけるパブリック・ヒストリーの実践の実態」を主題とし、博物館・メディア・教育の三領域に分けて調査を進めた。調査は研究代表者に加え、4名の研究分担者および2名の研究協力者がそれぞれの分担領域において実施した。具体的には、「博物館、美術館、文学館、各種文化施設における展示、活動、理念などの歴史実践の調査」、「映画、ドラマ、文学に見られる歴史実践の分析」、「大学および高等学校における歴史実践に関する活動、教材の制作、教科書および指導案の調査」が計画に従って順調に遂行された。各メンバーは学術論文、書籍、講演、口頭報告など、多くの成果を上げており、初期段階としては十分に意義ある成果が得られたといえる。
また、台湾と日本において以下の3回にわたる学術イベントを開催した:
(1)2024年7月20日には、台湾・国立政治大学台湾史研究所所長の林果顯教授を東京に招き、「台湾における高校歴史教育の改革とパブリック・ヒストリーの実践──選択科目教科書『探究と実作』を中心に」と題する講演を行った。当日は多くの高等学校教員および大学において歴史教育に携わる研究者が参加し、活発な議論が交わされた。本研究にとって初めての国際的な交流および社会的貢献の機会となった。
(2)2024年10月5日には、台北市にて台湾大衆史学協会と共催で「台湾島史 NEXT:2024 大衆史学台北論壇~難以面對的過去及國民共識」を開催した。同協会は台湾において学術界と市民社会を横断する代表的な組織である。
(3)2024年12月22日には、再び台湾大衆史学協会と共催で、「2024大衆史学台北論壇:台湾日本大衆史学交流会議」を正式に開催した。この会合では、日台双方から、本研究チームの複数のメンバーを含む登壇者によって論文発表がなされ、本研究チームの本年度成果が初めて一般に向けて公開された。

今後の研究の推進方策

2025年度の研究推進計画に関しては、三部門ともに、2024年度の調査方針を継承しつつ、その完成を目指すとともに、新たに以下の諸課題に着手する予定である。
まず博物館部門においては、「台湾各地の博物館における日本語資料や展示説明の精査、ならびにそれらが構築する歴史像とその効果の分析」および「日本国内の博物館、文化施設、地方自治体における日本統治期および台湾統治経験の語り方の分析」を一層強化する。次にメディア部門では、「日本社会における台湾映画および文学作品の受容過程および輸入経路の検証」を進める。教育部門においては、「大学および高等学校による台湾研修旅行・修学旅行を対象とし、現地での体験と事前・事後学習の実態分析」を展開する。
研究メンバーは今後、定期的に会議を開催し、各部門の進捗および課題の共有と検討を進めていく。また、三部門間の横断的な協力体制を構築し、相互支援を通じて新たな知的成果の創出に取り組む方針である。
学術活動の一環としては、日台双方のパブリック・ヒストリー研究者、博物館の専門家、高校教育の現場に携わる教員、あるいは文学・漫画・映画といったメディア創作者を招聘し、対面またはオンラインによる研究報告を実施することも計画している。こうした取り組みを基礎として、本研究計画の後半二年間においては、調査および分析の深化と射程の拡大を図るとともに、得られた知見を広く社会に共有し、国際的な学術研究としての成果の発信を一層目指す。

報告書

(1件)
  • 2024 実施状況報告書
  • 研究成果

    (24件)

すべて 2025 2024 その他

すべて 雑誌論文 (6件) (うちオープンアクセス 4件) 学会発表 (12件) (うち国際学会 5件、 招待講演 11件) 図書 (1件) 備考 (3件) 学会・シンポジウム開催 (2件)

  • [雑誌論文] 1954年マニラアジア大会と“外地”生まれの選手たち―連続性の視座にみる日本のアジア復帰2025

    • 著者名/発表者名
      菅野敦志
    • 雑誌名

      共立国際研究

      巻: 42 ページ: 87-108

    • 関連する報告書
      2024 実施状況報告書
    • オープンアクセス
  • [雑誌論文] 対外中国語教育と国家シンボル―“中国的”対外文化政策にみる両岸関係2025

    • 著者名/発表者名
      菅野敦志
    • 雑誌名

      共立女子大学・共立女子短期大学総合文化研究所紀要

      巻: 31 ページ: 51-65

    • 関連する報告書
      2024 実施状況報告書
    • オープンアクセス
  • [雑誌論文] 湾生・女性・スポーツ―溝口百合子と1954年マニラアジア大会2025

    • 著者名/発表者名
      菅野敦志
    • 雑誌名

      林初梅、石井清輝、所澤潤編『日台のはざまの引揚者たち国境の再編と移動・再出発』三元社 所収

      巻: - ページ: 211-238

    • 関連する報告書
      2024 実施状況報告書
  • [雑誌論文] 戦前・戦後の日台をつなぐ愛知の鉄道車輌/技術2025

    • 著者名/発表者名
      松葉隼
    • 雑誌名

      宮原曉、やまだあつし、小野純子、岡野翔太、呉穎濤編『名古屋、アジアに出会う』図書出版みぎわ 所収

      巻: - ページ: 113-132

    • 関連する報告書
      2024 実施状況報告書
  • [雑誌論文] 台湾のパブリック・ヒストリーの実践に関する一考察2024

    • 著者名/発表者名
      洪 郁如
    • 雑誌名

      言語文化

      巻: 61 ページ: 27~46

    • DOI

      10.15057/85033

    • 関連する報告書
      2024 実施状況報告書
    • オープンアクセス
  • [雑誌論文] 台湾における朝食の社会学2024

    • 著者名/発表者名
      洪郁如
    • 雑誌名

      日本台湾教育支援研究者ネットワーク編『臺灣書旅――台湾の食文化を知るためのブックガイド』台北駐日経済文化代表処台湾文化センター 所収

      巻: - ページ: 28-29

    • 関連する報告書
      2024 実施状況報告書
    • オープンアクセス
  • [学会発表] 日本の台湾統治と植民地モダンを考える2025

    • 著者名/発表者名
      洪郁如
    • 学会等名
      南山大学、アジア・太平洋研究センター
    • 関連する報告書
      2024 実施状況報告書
    • 招待講演
  • [学会発表] 台湾における博物館の新たな試み:戦後と「台湾」の語り方・伝え方2024

    • 著者名/発表者名
      洪郁如
    • 学会等名
      山本真科研研究会
    • 関連する報告書
      2024 実施状況報告書
  • [学会発表] 台湾のパブリック・ヒストリーの実践と「日本時代」2024

    • 著者名/発表者名
      洪郁如
    • 学会等名
      国際基督教大学、アジア文化研究所
    • 関連する報告書
      2024 実施状況報告書
    • 招待講演
  • [学会発表] 台湾研究視野中的日本大衆史学概述2024

    • 著者名/発表者名
      洪郁如
    • 学会等名
      2024大衆史学台北論壇:台湾日本大衆史学交流会議
    • 関連する報告書
      2024 実施状況報告書
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] 日本学生在《聴海湧》中看到了什麼?:転型正義後的日本時代表象2024

    • 著者名/発表者名
      赤松美和子
    • 学会等名
      2024大衆史学台北論壇:台湾日本大衆史学交流会議
    • 関連する報告書
      2024 実施状況報告書
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] 教科書中呈現的体育與公衆歴史:一個台日比較的観点2024

    • 著者名/発表者名
      菅野敦志
    • 学会等名
      2024大衆史学台北論壇 台湾日本大衆史学交流会議
    • 関連する報告書
      2024 実施状況報告書
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] 台湾における歴史産業遺産の保存と利用:阿里山森林鉄道と台湾鉄路関連史跡を中心に2024

    • 著者名/発表者名
      松葉隼
    • 学会等名
      鉄道史学会第42回大会
    • 関連する報告書
      2024 実施状況報告書
    • 招待講演
  • [学会発表] 日本人的台湾経験与台湾記憶 :戦前到戦後的連続与断裂2024

    • 著者名/発表者名
      松葉隼
    • 学会等名
      国立中央大学歴史研究所
    • 関連する報告書
      2024 実施状況報告書
    • 招待講演
  • [学会発表] 従個人史、社会史到大衆史:日本人的台湾記憶及其戦後2024

    • 著者名/発表者名
      松葉隼
    • 学会等名
      2024大衆史学台北論壇:台湾日本大衆史学交流会議
    • 関連する報告書
      2024 実施状況報告書
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] 在台日本人的台湾記憶与「引揚」経験:個人史与社会史的対話2024

    • 著者名/発表者名
      松葉隼
    • 学会等名
      国立交通陽明大学社会与文化研究所
    • 関連する報告書
      2024 実施状況報告書
    • 招待講演
  • [学会発表] 台湾留学経験と研究2024

    • 著者名/発表者名
      福田栞
    • 学会等名
      東洋英和女学院大学海外研修A(台湾)
    • 関連する報告書
      2024 実施状況報告書
    • 招待講演
  • [学会発表] The Modern Japanese Printmaking in Tainan, Taiwan under Japanese Rule: Teaching and Artworks of Yamamoto Isoichi(1896-1962)2024

    • 著者名/発表者名
      福田栞
    • 学会等名
      Taiwan-Japan Art History Graduate Students'Symposium
    • 関連する報告書
      2024 実施状況報告書
    • 国際学会 / 招待講演
  • [図書] 台湾文学の中心にあるもの2025

    • 著者名/発表者名
      赤松美和子
    • 総ページ数
      288
    • 出版者
      イースト・プレス
    • ISBN
      9784781624150
    • 関連する報告書
      2024 実施状況報告書
  • [備考] 一橋大学社会学研究科 教員紹介: 洪郁如

    • URL

      https://www.soc.hit-u.ac.jp/teaching_staff/ko.html

    • 関連する報告書
      2024 実施状況報告書
  • [備考] 共立女子大学 教員紹介: 菅野敦志

    • URL

      https://kyonet.kyoritsu-wu.ac.jp/kgResult/japanese/researchersHtml/T02121006/T02121006_Researcher.html

    • 関連する報告書
      2024 実施状況報告書
  • [備考] 名桜大学 教員紹介: 清水美里

    • URL

      https://www.meio-u.ac.jp/research/scholars/shimizumisato/

    • 関連する報告書
      2024 実施状況報告書
  • [学会・シンポジウム開催] 台湾島史 NEXT:2024 大衆史学台北論壇~難以面對的過去及國民共識2024

    • 関連する報告書
      2024 実施状況報告書
  • [学会・シンポジウム開催] 2024大衆史学台北論壇:台湾日本大衆史学交流会議2024

    • 関連する報告書
      2024 実施状況報告書

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公開日: 2024-04-11   更新日: 2025-12-26  

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