現象学において、主体の経験の分析を通じた対象の存在の解明は根本的な主題である。20世紀フランス現象学研究のもとでは、そのうち存在の様相の一つとしての「必然性」に関する「懐疑的態度」および「自由意志」について数多くの議論がなされてきた。それに比して、「必然性」の対となる「偶然性」は周縁的な主題とみなされる傾向にある。本研究は、フランス現象学の中に「偶然性」に関する「信(信頼)」の現象学的解明を見出だすために20世紀初頭にカント哲学の影響下で形成されたドイツ・ユダヤ思想を手掛かりにすることで、フランス現象学に新たな視座を提供することを目的とする。
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