現代の心の哲学においてもなお難問として残されている心身問題の前提となっているのが、デカルトのいわゆる「心身(物心)二元論」であるが、本研究は第一に、当のデカルト哲学において正当に評価されてこなかった、「二元論」の枠組みを解体する可能性を持つ心身論(人間論)を再評価する。第二に、デカルトの心身論と際立った対照をなし、ともに考究されるべきスピノザの心身論を、心を宇宙の物理・化学・生物学的進化の産物とみなす発生論的観点のもとで分析する。そのうえで、これら二つの課題を総合することで、二元論的枠組みを刷新し、心身問題(人間の生)を考究する新たな思考の枠組みを創出することを目的とする。
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