死亡胎児(流産、死産、中絶によって生じる胎児)の供養として「水子供養」がある。水子供養には、商業主義的との批判のほか、胎児を人とみなす胎児中心主義的であるとの批判もある。その一方、欧州諸国では流産、死産を経験した親へのケアから、死亡胎児の命名や埋葬の権利を認めつつある。また、アメリカでは、中絶規制の手段として、医療機関に死亡胎児の埋葬を義務づける法改正をする州もある。つまり、死亡胎児の命名や埋葬は胎児を人格とみなす主張と近く、プロライフ派の主張と近い。これらを踏まえ、胎児中心主義的言説によらない、流産、死産などを経験した親へのケアと、死亡胎児の命名、供養のあり方の可能性を明らかにする。
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