現代の社会では、人々の孤独が大きな問題となっている。かつて人々を結びつけていたコミュニティは、近代に至って個人の目的を追求する私的権利と引き換えに失われ、もはや私的権利を犠牲にしてコミュニティを取り戻すことは不可能だと言われる。美術においては、1970年前後にコンセプチュアル・アートが、グローバルな状況に対応する流動的で場所を持たない芸術形態として現れた。ダン・グレアム(Dan Graham 1942-2022)は、その代表的なアーティストとされる。しかし彼は、パフォーマンスや建築的作品も制作している。本研究では、グレアムの活動において、人々の相互性や共同性がどのように扱われてきたかを考察する。
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