研究課題
基盤研究(C)
本研究は、ロヒール・ファン・デル・ウェイデンの《七秘跡祭壇画》における翻る布の表現が、「聖霊のルーツに自然の風がある」という宗教的、歴史的知見に基づくことをあきらかにする。これは、古代復興というルネサンス的性格を有する解釈であり、人間の生活や運命が自然現象に左右される際にも神の恩寵を願うという、キリスト教の人文主義的変化を意味する。本研究では、このことが風や大気の研究を含む16世紀の自然科学の発展と関係する諸相を探り、磔刑図をはじめとする宗教画や、さまざまな形で急速に発展した風景表現の中に、目に見えない風や大気の意識化の過程を浮き彫りにする。