本研究は「日本文学」という枠組みを越えた「日本語文学」という観点から、戦後の台湾(中華民国)において俳句を創作し続けた黄霊芝(1928-2016)の俳句・俳論の生成過程とその成果を詳らかにすることを目的とする。日本語使用が禁止された戦後の台湾で、あえて日本語で創作を行ってきた俳人・黄霊芝の文学営為を通じて、〈帝国〉日本が植民地に残した負の遺産を明らかにするとともに、日本=日本人=日本語=日本文化という了解の上に成り立ってきた「日本文学」という制度を相対化し、民族や場所を限定しない「日本語文学」の可能性を追究する。
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