ロマン主義の理論的根幹をなす想像力は、18世紀末以降の科学的思考とも少なからず親和性を持っている。啓蒙主義以降の科学は直接観察・検証できない自然現象を扱うようになった点で、18世紀唯物論が重んじていたた帰納法だけでなく、現象全体の構造や原理を洞察し、そこから現象の多様性を説明する仮説演繹的アプローチを活用するようになった。思想史的に見ればこれはカントからロマン主義へと流れ込んでいく創造的な推論方法であるが、本研究では、こうした思考が、19世紀前半英国の比較解剖学、古生物学、地質学の理論・実践両面でどのように継承されたかを、学際的方法論の歴史的問題として考察する。
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