本研究は、詩人としてのハーマン・メルヴィル(Herman Melville)を再評価する批評的潮流の中で、特に『戦争詩集』(The Battle Pieces and Aspects of the War, 1866)に着目し、これまで詩作の未熟さに帰されてきた詩のぎこちなさを、その形式上の実験性、戦争詩というジャンルからの逸脱、叙事詩と抒情詩の交錯を通じて、民主主義に不可欠な微妙な差異と忍耐を表象する、メルヴィル独自の詩学に基づいたものとして読み解く試みである。また、『戦争詩集』から読み取れる民主主義の哲学を、メルヴィル後期の作品群に照射し、その展開を見たい。
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