研究課題
基盤研究(C)
本研究は、自由と自律を前提とした従来の制度や思想を問いに付す「ケアの倫理」の視点から、19世紀ドイツ文学をとらえ直すものである。特に「子ども」や「妊娠」を描いたテクストに注目し、そこにみる自由・自律への希求とケアの要請のせめぎ合いを分析する。まず近代的な自律志向とケアの理念の対立構造を表現したゲーテの作品を論じ、その上で、この対立構造の展開を、ヘッベル、シュトルム、およびオットー=ペータースのテクストに注目して論じる。全体を通して、ケアの領域の位置付けおよびその公共圏との関係性がどのように問題化されてきたか、また文学作品がこの問題系について批判的な視座をどう提供してきたのかを明らかにする。